鈴木ピク

アイドルマスター シャイニーカラーズ 第2章の鈴木ピクのレビュー・感想・評価

2.3
格別な思い入れがあり、そのシナリオから拡張した価値観数知れないゲームenza版アイドルマスターシャイニーカラーズ。そのアニメ版がポリゴンピクチュアズのCG版アニメと知り如何にがっかりしたか、そして第一章がもはや趣味嗜好の領域を超えてスクリーンにかけていいレベルではない出来で、内容もまた粗末な汎用型の作品であったか。

その失望は今でも思い返すだにため息が漏れるが、比べると多少はマシになった、というか「展望が開ける」ようになった第二章だった。
特に白眉は第6話。各ユニットをドキュメンタリー班が追うようになり、またアイドル達もスマホカメラでの自撮りを行う。
そこまで「CGの制約から、可能なショット、可能な芝居」を逆算して映し出されてきた画面は純粋な演出的効果としては「妥協の産物」でしかなかったが、ここでは技術的な制約ではなくあくまで劇中世界のリアルに準じた制約でショットが生み出されるので、こちらが薄目で忖度せずとも見ることが出来る。
あと単純に自撮りカメラ映像はCGアニメの利点を使った面白いアニメになっている。

話が毒にも薬にもならない点は変わらず、と言いたいところだが、第一章のそれがどこまでも味を薄めてキッズアニメの型にハメた、万人向けといえば聞こえはいいがチューニングを絞る手間を省いた惰性のそれだったのと比べて、第二章はまがりなりにもこの作品世界固有の「空気」を画面に宿そう、細かい話よりその世界にいるアイドル達を息づかせようとしている跡を感じる。
特に背景美術に汚しが入り始め、陰影を使ったシーンなどで照明が効果を発揮するなど、目に見えてルックのバリエーションが豊かになった。
正直、芝居ではまだ油断するととても生きてるとは思えないただの「プログラムされたモデル」が動いてるだけの瞬間が無数に散見されるが、それが各話EDで引きの一枚絵で再登場した際に、その世界の重力は発生しているように思えなくもない。
ゲームの一枚絵の再現みたいなショットでオタクに目配せしてくるあたりは非常にムカついたが(「この」映像世界の演出の磁場と関係ない為)。

普通に気合い入れた作画アニメならとっくに立てているスタート地点に「近づいてきている」というだけでなんで喜ばなくてはいけないのか、理不尽な気持ちもするし、ポリゴンの技術向上にシャニマスが利用されている感も到底納得いくものではないが、原作(enza版)が持っているアンニュイな空気に至る道筋が、今までまったく見えなかった分、少し見えてきたことに希望を託そうか。

いやまだまだ普通に仕切り直しで作画版が見たいが、どっちにしろ脚本の無難さが阻んでしまうものはありそうだ。
鈴木ピク

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