爆裂BOX

Love Will Tear Us Apartの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

Love Will Tear Us Apart(2023年製作の映画)
3.7
スプラッターホラー?ブラックコメディ?それとも…と何とも言い表せないへんてこりんな映画ですね。
主人公真下わかばは日本の田舎に暮らす普通の小学生だったが、ある日、いじめられていた小林幸喜を助けたことで自分もいじめの標的に。だが、いじめっ子は何者かに校舎から突き落とされる。7年後、高校生になったわかばは親友の環奈と憧れのバンドと一緒にキャンプに行くが、そこに殺人鬼が現れる、というストーリーです。
序盤のわかばの小学生時代を描いたシーンでのイジメの描写は日本が舞台で小学生が行っているのもあってリアルで胸糞悪いですね。わかばの家庭も父親がモラハラで毒親だし、でもそんな状況でもイジメ止めたり明るく振る舞うわかばが健気。自分がいじめられたときは流石に号泣する所は可哀想すぎる。その直後のいじめっ子二人が突き落とされる所は妙に淡々とした感じが逆にギョッとさせます。
そこから7年後に時間が飛んで、チャラそうなバンドマンや女子たちと森へキャンプに行ったわかば達が殺人鬼に襲われますが、ジワジワと一人づつ殺していく定番スラッシャー展開かと思ったら、結構凄い勢いで殺していきます。森が舞台のキャンプスラッシャーで進むかと思ったら、そこからさらに一年後や二年後と時間飛んでいきます。まあ、基本的にはわかばが酷い目に遭いそうになると殺人鬼が現れてその相手を殺していくという展開です。親友を殺されたわかばが「150人の殺人鬼を倒した男」に弟子入りして修行したりして殺人鬼と戦うバトル展開になるのかな?と思いきやそういう方向でもなく、展開は結構読めない感じでしたね。
首チョンパシーンもありますが、流血量はほどほどだけどゴア描写は大したことなかったな。終盤の脳天ミキサーは「サプライズ」でもありましたけど、こちらも血は流れるけど直接的な損壊描写はなかったですね。
久保田紗友演じるわかばは辛い事や殺戮に巻き込まれてもあまりトラウマになってないような感じで上京してすぐ如何にも胡散臭いナンパ男に引っ掛かって出会ったその日にプロポーズされてもはっきり断らなかったりイマイチ危機感無い子で見てて別の意味でハラハラしましたね。「いかんて!そんな簡単について行っちゃ!」と声かけたくなりました(笑)
他のキャスト陣も結構豪華で、前田敦子はチョイ役だけどことなかれ主義な教師役上手いなぁ。麿さんはわかば鍛える仙人、と思わせてのスケベ爺であの扱いは笑ってしまいました(笑)「チャンネル登録よろしく!」の所も可愛くて良いですね(笑)
しかし何といっても一番は最初の殺人で娘殺されて復讐に燃える刑事を演じた吹越満が全てを掻っ攫っていった感があります。娘の遺骨ボリボリ食って、主人公とあってる時にも食って主人公にも勧めるナチュラルな狂いっぷりが素晴らしい。身体に彫った娘のタトゥー披露したり終盤は独壇場と化していましたね。
終盤明らかになる殺人鬼の正体とその目的によって粗筋通りわかばは本当の愛を知って、そして下した決断など物語は一気に究極の愛を描いたラブストーリーになります。ハンカチを渡して少し会話しただけだけど、学校にも家にも安らぎがなかった彼にとって大きな救いになったんだろうな。それこそどんな手段用いてもわかばを幸せにしようと決意するくらい。想像で彼女を抱きしめてたけど、刑事の言う通り行動に移す勇気なかったのもあるだろうけど、人殺した自分にはその資格ないと思ったからできなかったんだろうな。
歪んでる・狂ってると言われようと、それこそ世界を敵に回そうとも二人で生きて幸せになると決めて砂浜を歩く二人の姿に何とも言えない余韻感じました。
殺人鬼物ではありますが、この映画独特の雰囲気が自分には結構ハマった映画でした。