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バカ塗りの娘のnuxのレビュー・感想・評価

バカ塗りの娘(2023年製作の映画)
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キスマイ宮田くんの古のオタクなので彼を目当てに映画館に足を運んだのだけれど、そのことを横に置いといて、普通の映画ファンの目線からしてもとても良い作品だった。

津軽の伝統工芸「バカ塗り」のシーンがとても静かで、ひたすら小林薫さんと堀田真由さんが黙々と作業する音だけが聞こえてくるのが心地良かった。漆塗りってこんな風に作るんだ、ものすごく手間がかかっている職人芸だなというのが伝わってくる分、これができるようになるまできっと何年もかかるのに、その結果それでご飯を食べていくのは厳しい、となるとそりゃ文化は廃れていってしまうよなと思って寂しい気持ちになった。とはいえかくいう私もニトリやIKEAで大量生産の安い食器を適当に買って適当に使っている大量消費社会に取り込まれている側の人間なので何も言えないのだけれど。本当はこういう日本伝統の技術が使われている良質でちょっとお値段が張るものを選んで、大切に何年も何年も使うような生活がしたいな。そういうのが真の格好良い素敵な日本の暮らしだと思う。生活を全部急に変えるのは無理にしても、そういう意識を持って、何かを買う時にちょっと立ち止まることが必要だなと思わされた。

この作品、伝統工芸を父から娘に伝えるストーリーだと思って観に行ったのだけど、思っていたよりもうちょっと広い意味で「家族」を取り扱っている映画で、その部分でも見どころがあった。ネタバレになるのであまり書けないが、私の推しの宮田くんはその部分で健闘していて、ファンの贔屓目ということは重々承知の上なんだけど、本人の優しい穏やかな性格が活きているハマり役だった。鈴木さん役を演じているものの、お花屋さんや青木家での食卓のシーンで漏れ聞こえる笑い声がいつも聞いてる宮田くんそのままの朗らかな笑い声で思わず観ながらにっこりしてしまった。

小林薫さん演じるお父さんが、絵に書いたような昔っぽい寡黙で厳しい頑固親父の職人っていうわけではなく、そんな雰囲気もありつつ、意外と現代の価値観に理解があったり、娘に不器用な優しさを見せたりする複雑なキャラクターなのが個人的にとても好きだった。全然関係ないのになんか自分のお父さんと重ね合わせちゃって何度か泣けてきちゃったな。田舎に帰ってお父さんに会いたくなった。

推しのおかげで良い映画を観る機会恵まれて良かった。
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