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戦場の小さな恋人たちのmhのレビュー・感想・評価

戦場の小さな恋人たち(1981年製作の映画)
5.0
世界的に視聴困難になってるエンタメ戦争映画。
適当に軍務をこなしている軽薄な兵士が、孤児院の世話を押し付けられる。その対応に追われていくうちに、本人も周りも成長してゆくベトナムが舞台のヒューマンドラマ。
野戦病院の手伝いでモルヒネくすねて物資調達をしている主人公。それがバレて、死体処理場に回される。死体処理場で働いているから、ちょいちょい背景に死体が映り込む。
素晴らしいのは、テンプレ展開にならないところ。どっかで見たことあるようなプロットがほとんどないので、画面から目が離せない。
主人公の好意につけこんで、際限なく要求してくる(次々孤児を拾ってくる)修道女がいいね!
弱いだけじゃなく、ベトナム人の強かな面がうまく現れている。同時に、きれいごとでは済まされない戦災孤児問題を観客にも知らしめる。
ヒロインである女医の葛藤も良かった。
貧困家庭に生まれ育ち、学費と教育を得るために陸軍に入隊する。苦労してきたので、キャリアが捨てられないと泣いてしまう。
軽薄だがいいヤツで、いざってときに頼りになる主人公のキャラ造形は、アメリカそのものを表していて、だからこそ、養子縁組に失敗するのだろうね。つまり、がんばったけどベトナムとはうまくいかなかったのだ。
映画としてはほんと不思議なバランスで、物語を締めくくるタイミングは(みんなが孤児院への食料搬入に協力してくれるようになったときなど)いくつかあったはずなのに、それから養子縁組の話があり、ガスタンクのブービートラップがあり、修道女からの告白があり、ターザンとの別れがあり、女医へのプロポーズがある。
省略してもおかしくないプロットを、全部やり尽くしてのエンドはなかなかない。
最後のセリフ、I love you.son of a bitch.がやたら決まっていた。
序盤にあった「(少女を)市民病院に送ったら殺される(から、孤児院が必要)」というセリフに説明はなかったけど、設備面で十分な医療が受けられないという意味か、それともロヒンギャ族の少女だったのかな?
資材倉庫を仕切ってる黒人兵が、市街戦のあと、現地妻の子どもたちを収容してくれるのを条件に協力を申し出るのとかうまい展開だった。
女医さんが折れたあと、当たり前のように協力してくれるようになったところは涙腺だった。
いやこれほんと良かったわ。
日本のみならず世界的にDVDにはなってないようで、見たい場合はVHSを探すしかない。
配給のサンリオがその気になれば、今後サブスクにあがったりもするかもしれないけどね。
レアさの加点もあるけど、これはほんと面白かったです。
mh

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