アルタイル

キングダム エクソダス〈脱出〉のアルタイルのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

長年の時を経て、観客達の大笑いと共に幕開けしたエクソダス。始めは分離していた現実世界と物語の世界は、エピデミックのように徐々に繋がれていき、境目が無くなっていく。
変わった事もあれば、変わらず残っている事もある。それは、一人の人間の人生においても言えることだ。
時にはメランコリアのように崩れゆく世界を静かに受け止め、アンチクライストのごとく常に悪魔と死神の気配を肌で感じる。クロウスホイが居たアヘン窟はエレメントオブクライムを思い出させ、次第に追い詰められていく彼らの未来を予見させる。
この作品の中にはトリアー監督の内面に迫る描写も多く、ある種のセラピーとして5つの挑戦が、過去の振り返りと自己分析としてニンフォマニアックが連想される。
SAによる病院でのいたずら行為はイディオットのようで、彼らは皿洗い係達のように本質を見抜く目は持たない。
院内裁判での理不尽さはドッグヴィル。人間のカテゴリ分けにより真実の発見が遅れる部分はマンダレイ。
カレンが奇跡の海だとしたら、リトルブラザーとビックブラザーはダンサーインザダーク。突如訪れる無重力空間はヨーロッパでの水没シーンのような浮遊感。全体はボスオブイットオールのようなコメディで、ボスの登場には笑った。
キングダムはトリアー監督自身。院内はこれまでの様々な歴史と精神世界で満たされていて、とても楽しめた。エンディングで足だけでも出てきてくれて嬉しかった。

すべて盗まれた。とは、アイデアの事だろうか。それとも心。それとも大切な人。もしくは北欧文化やアイデンティティ?
この部分がまだ謎である。しかし間違いなくトリアー監督は、私から1ヶ月の時間と心を奪っていった。今となっては祭りの後の寂しさだけが、私を包み込んでいる。

ちなみに、ビックブラザーのポスターは優しいベージュ系なので、意外とインテリアに馴染んでいる。レトロスペクティブのアートなポスターも同様に。
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