ほし

花腐しのほしのレビュー・感想・評価

花腐し(2023年製作の映画)
4.5
メインの3人かなり良かった。
原作とは完全に別物として捉える前提で、ストーリーもセリフも良かったし、取り扱うテーマも良かった。
(原作は原作で良いのだけど)

監督自身を各役に投影してる部分はかなりあった気がする。
・自身のキャリアの中心である脚本家
・ここ数年、自身で引き受ける頻度が増えている映画監督(本作然り)
・そして被写体として撮り続けてきた女優(ロマンポルノ)
この三者の会話劇を中心に進行するのは、映画人としての自分の総決算として撮ってるからなのかなとか。
そもそも原作だとこんな設定ないし。でも、これが効果的だった。

脚本家から見えている女優と監督から見えている女優は違うということ、そしてその2つが同じであることが最後にわかり、三者は和解するということなのかなと。

当然この構造だけではなく、より具体的で切実なテーマが随所で取り上げられている。

メイン3人以外のキャラクターに話させているところでも、映画学校?みたいなところで、
・君たちが思いつくようなことは過去の偉大な作り手たちが考えついている
・でも、それらの人は今は生きてない
・だから君たちは今を撮ることで戦うべきなんだ
って感じのセリフあったけど、これほぼまんま同じことを荒井監督が話してるの見たことある。

あと、比較的本作は昭和のおっさん臭が薄まってた気がする。
火口のふたりとか、現代を描いているはずなのに、どこからどう切り取っても昭和としか思えなかった。
本作はあえて2000年代から2010年代にかけての話題になったことを単語レベルでも混ぜたことで少しましになった気がする。

画面が一瞬静止する創りは今どきだと珍しく、最後もそれで締めくくられる。
いかにも一昔前の演出だけど、この映画に関しては良かったんだよな。

そういえば観に来てるのはほぼシニア層(というかおじいちゃんばかり)で、すごい場違いなところに来てしまった感じがした笑
でも良く出来てるから、若い人こそこういう映画観たほうがいいと思う。

今年観た映画の中で、印象に残ってるトップ3は、after sun、ター、花腐しかな。

邦画の居場所はここにある気がする。
ほし

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