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PERFECT DAYSのkakakaのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1
役所萌え映画。
自転車こぐ役所、苗木を持って帰るのにプランターを新聞紙でDIYする役所、雨合羽着る役所、どれもが愛しい。
朝のルーティンをこなし、アパートのトビラを開けて出かける際、空を見上げる彼の眼差しは、まるでカメラのレンズを思わせる。
同じように見える日々も、毎日空のフィルムのように出かけ、シャッターを切るかの如く丁寧に生き、1日の終わり、眠りの中で見るスライドは、一杯になったフィルムの巻き戻しのように思えた。
彼のように静謐に過ごすことは難しくても、空色の変化、日常の微妙な変化を楽しめれば、人生はもっと豊かになるであろう事に改めて気付かされる。
また、セリフの少ない平山(役所)だが、物置で目覚める際、ゴルフセットや大きなキャリーケースが映り、さらに彼の妹の有り様、セリフを考えると、もしかしたら、バリキャリだったが、父親のプレッシャーの反動で、今のような生活を選んだのではと想像出来る余白も映画として楽しい。
ラストの彼の表情から滲み出るものは、有り得たかもしれない未来に、それからもう取り戻せない時間に対しての郷愁と、これからも続くであろうささやかな日常へのこそばゆいような希望が混じった、生きていこうと思わせてくれる、素敵なシークエンスでした。
選曲も良く、ヴェンダースと同じようにカメラを覗いて平山を見つめるみたいに、映画館の暗闇がとても似合う映画でした。
夏目漱石が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したように、
「PERFECT DAY」を「空の青さよ」と訳したい。
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