NaomichiTamiya

PERFECT DAYSのNaomichiTamiyaのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8

アカデミー賞ノミネート作品として気に留めていた作品を映画館で鑑賞。

外国人の監督が、日本の東京で働くトイレ清掃員の姿を、繰り返される「日々のルーティーン」を、ドキュメンタリー作品のような視点で、詳細な説明も解説もなく、ただ流しているような作品。

そんなのが面白いの?と問われると、意見は二分されるようで、私はその変わり映えのしない清掃員の姿に、見入ってしまっていた。彼の繰り返される日常の中に起こる、小さな変化や出会い、少しだけ笑顔になれる瞬間、他者との交流や心の変化、そこから生まれる様々な感情、そして夢うつつの中で瞼の下に見える心の内にある景色。

男がどのような人生を歩んできたのか、どのような人となりなのか、家族はいるのか、何を楽しみにして生きているのか。それらのヒントは、繰り返される日常において、うっすらとわかりかけるものもあるが、そこはあくまでも我らは第三者としての視点から先に進むことはできず、彼の全てを知ることは叶わない。

そこは、舞台が日本であっても、監督が外国人であることにより完成された作品となっている。外国の文学作品を観たような印象に近いものを感じる。

外国で評価を得た作品であることから、東京で暮らす日本人の日常や視点、衛生的で高機能な日本のトイレ事情、名所スカイツリー、浅草近辺、銭湯、といった、外国人が興味をそそられる材料がふんだんに散りばめられているのも、外国人としてみる日本が表れていたように感じた。

役所広司あっての映画であり、役所広司だから味があった作品でもある。途中で演歌歌手のあの人が登場した際は、現実に引き戻された感じがしたものの、サプライズだと思えば面白いもの。

憶測の中で締められる映画ではあるものの、変わり映えしない日常を生きる我ら日本人の生活の中においても、明日にはわからない出会いや何かが唐突に起こるサプライズが待っているのではないかと、一歩踏み出しつつ日々を生きていこうと考えさせてくれる作品だったのではと思うもの。

私は見て良かったと思うも、隣で観ていた妻は、睡魔と闘っていたようだった。
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