不穏だ!!
これは映画というより、ドキュメンタリー。
登場人物の顔もろくに映らないし、表情もよくわからない。
ずっと定点カメラで、基本的には、どこか物憂げな夫と、転勤したくない妻と、その子供と、使用人との生活を見せられている感じ。
そこには大きな起伏もなにもない。
でも、絶え間なく聞こえてくる環境音。それは、犬の鳴き声、談笑、悲鳴、怒号、銃声。。
それが日常になってしまった家族は、まるで掃除機の音のように、耳には入っているけど、気にはしない。関心もない。
むしろ、その環境が心地よいとさえ、感じてしまっている。
関心があるのは、出世か、今の豊かな暮らしか、持ち主もわからない歯で遊ぶことか、飢えているであろう彼らにリンゴを分け与えることか。
しかも、そんな光景と音が、どこか退屈に思えてくる時もある。途中途中の大きな音にハッとする瞬間はあれど、観客も途中で慣れてしまう。
実際、寝息をたてていた観客も多かった。
私たちも、決して映らない壁の向こう側では何が起こっているか知っていて、でもただ見てるだけ。
何に関心があって、この映画を見たんだろ。