OKOKANO

関心領域のOKOKANOのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.2
最初からカメラアングルは、家族を観察するかのように、低めに固定された角度で映す。会話によって切り替わるが、よくある平凡な家族のやりとりで、あまり感情は伝わってこない。そこに鳥と囀りと聞き取れない叫びと響き渡る鈍い音。一見、安全な日常と地獄の収容所の境界線は壁の一線でキッパリ別れているようにも見えるが、焼却炉の煙突の煙や画面を横切る捕虜を運ぶSLの白煙、(おそらく臭いも)など、とてもまともに住める環境ではないが、それでもこの場所に執着する妻。美しい花が咲き乱れ、温室・プール付きの自慢の家でさえも無関心を装うことで成り立つ世界は、まともではないと自覚させられる。ルドルフの視線の先にある今のアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館。残像が残る閉じ込められた映画館の真っ暗なスクリーンを見させられると、自分はどちら側にいるのか、わからない不安に襲われる。もしかしたら境界線なんて存在しないことに気づいた不安のかもしれない。
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