萩原くわがた

成龍拳の萩原くわがたのレビュー・感想・評価

成龍拳(1977年製作の映画)
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復讐と裏切りと殺しに彩られた残酷な物語であるが、その奥には淡い恋心が燃える不思議な作品。
アクションは特撮が多めのカンフー映画と言った感じで、様々な武器戦闘や一対多の戦いも多く見応えはバッチリ。動きもすごいキレキレでラストバトルなんかも物凄い。
ストーリーはジャッキーが主演ながらも暗くシリアス。加えて突拍子もない展開もそこそこあり決して見易いものではないのだが、大きな魅力として輝くのが”直向きな恋”の描写。
復讐と暴力の中で生きてきた女盗賊の首領の不器用で愚直な主人公への実らぬ恋心は物語の中で一貫されており、その切なさといじらしさに心を揺さぶられる。愛情表現の手段が分からないままに恋を燃やす彼女を演じたシュー・フォンの表情は、カンフー映画でありながら格闘シーンに引けを取らない素晴らしさがあって、間違い無くこの作品における大きな魅力だと思う。
映像演出においても流すようなカメラアングルで人物を映したり、風景を中心に捉えるカットを挿入するなどカンフー映画にしてはなかなかに洒落ている印象があって面白かった。あとラストに流れる日本の配給会社がつけたBGMは衝撃的なまでにクール。必聴。