よだりお

タイタニックのよだりおのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
5.0
初めて10代のときに見たときは辛すぎて、観終わったあとにしばらく立ち直れなかったから久しぶりに劇場で見て色々と感じたことを書いておきたい

1997年、私と同い年の映画
タイタニックファンの友達が「これはジャックとローズの物語ではなくて、タイタニックの物語だ」と言っていた
1,500人が冷たい水の中で絶命した事故…を、主に2人のラブストーリーで追う
もちろんこれはラブストーリーなんやけど、強く生きる1人の人間のお話なんやろな

はじめの就航のシーンで、馬車から出てきたローズは”I don’t see what all the fuss is about. It doesn’t look any bigger than the Mauretanian“と当時同じく注目を集めていた豪華客船と比較して憎まれ口を叩く。このときローズに「甘やかされたわがままなお嬢様」なのだという印象を持つが、のちに母親に "We are women. Our choices are never easy” と言われながらコルセットを締め上げられるシーンを見るとローズの苦悩が窺える。
望まぬ結婚の婚約パーティが待つフィラデルフィアに向かって華々しく自分を移送するタイタニックは、彼女からすると無神経で嫌なものだっただろう。奴隷船って言ってるしね。
にしても、ローズ初登場のシーンはあまりにも美しくて言葉を失うし、お母さんは中世の貴族みたいな、トランプのクイーンみたいなお顔笑

ジャックは就航5分前のタイタニックのチケットをギリギリでゲットしてウィスコンシンに帰る絵描きの青年。パリでは認められなかったって言ってるから、母国に帰って何かやり直そうとしてたのかな?無一文で母国にも帰れないと思ってたやろうから、相当嬉しかったことやろうと思う。当時は移民全盛期で、ファブリッツィオがアメリカで財を成す!と意気揚々なのも印象的。
乗ったあとは、船首で “I’m the King of the world!” と楽しそう。何も持たない少年がここまで幸福そうなのは自由だからだ。

一方、決まりきった前途に絶望し、ディナーを抜けて船尾から身を投げようとするローズを、満点の星を眺めながら煙草をふかしてたジャックが気づいて止めるシーン。
ジャックは前のシーンで、甲板に出てきていた苛立った様子のローズが気になっていたから、船尾で出会ったとき、あ、と思ったはず。
「自分も飛び込む」と自分を人質にローズを説得してローズは思いとどまる。
ジャックは「千本のナイフに刺されるような痛み」で最後は死ぬと思うとね。。

ローズはどのポイントでジャックと恋に落ちてたんだろう?
ジャック越しに自由を愛してたと見ることももちろんできるけど、個人的にジャックとはえもいわれぬ相性みたいなのもあったんかなと思う。
デッキで初めて2人で長話したときに、「失礼な人!もうさよなら!」と怒ってたローズが、「まだ行かないのか?」とジャックに笑われてた時点で、2人の間には気持ちがあったんだろうなと思うし、そこに特別理由はないんだろうなと思う。

自分を偽らず、自分が自分であることを申し訳なさそうにせず、ローズの周りの社交界の人たちをディナーテーブルで笑わせるジャックにローズは惹かれてたし憧れてたんだろうな。

躊躇うローズを簡単に新しい場所に連れて行くジャックは私にとっても眩しかった笑
A woman’s heart is a deep ocean of secrets …

キャルもキャルで、最後までどうしようもない奴なんやなとは思ったけど、ローズを好きな気持ちは結構本物なんだろうなと思うと切ない。

本物のパーティで楽しむ2人も、絵を描くシーンも、車のシーンも、2人が一緒にいられてよかったーってなる。

ジャックに盗人疑惑がかけられて、ローズも一瞬「あぁやっぱり」と思ってしまったんやろうけど、すぐに根拠はないけど「そういう人じゃないから」と信じて助けに戻って、もたつくドレスの裾をひいて水の中頑張る姿はめちゃくちゃ泣けたけど共感できた。
2回目見ると、2人が何回もピンチを乗り越えてることもわかるし、「なるべく長く船の上にとどまるんだ!」「船尾の向こうにまたがれ!」「船体に吸い込まれないように上に泳げ!」と冷静な(どこで物理学勉強したんだ?)ジャックは、「この人は生きて自由を享受すべきだ」と割と冷静に切り替えてローズを確実に生かすことを軸に行動してそう。途中までは"We can make it"って言ってるねんけど、自分のことを諦めてからは"you"に主語が変わってるのよね。死んでいく彼の脳裏には、ローズのこの先の人生への祈りがあったのやろうか。

3回目見に行っちゃった(笑)プレミアシートでふかふかで見て幸せやったな〜
ジャックとローズは出会った瞬間からずっとバイブスはあるねんけど、具体的に恋に変わるのは階下の"本物のパーティ"のシーンなんだろうな〜
ジャックはローズのことを「自由を見せてあげたい同情しちゃうほっとけない子、気になる子」だと思ってたと思うけど、あのシーンで軽快に堂々と踊って楽しむローズのことを、囚われの子じゃなくて人間として惹かれて好きって思ったんだろうな

沈没のシーンで、史実で体内にアルコールが残ってて生き残ったとされるパン職人がお酒をあおってる場面とかあって、芸が細かいな〜と思った。

3回目みたとき、ジャックが覚悟を決めた瞬間がちゃんと写ってた。2人でドアに乗ろうとしてひっくり返りそうになったときに、ジャックが何かを考えて決め込んだ顔をしてる。あのときに、ローズを生かすように方向転換したんやろな

ローズは死にたかった、ジャックは生きたかった、ローズはジャックのために生きて、ジャックはローズのために死んだんだな。
ジャックは愛する人に自分の愛する自由を本当に味わってほしかったんだな。ローズ、馬にもまたがれて、女優さんの夢も叶えて、たくさん子どもを生んで温かいベッドで休めてよかったね。
ジャックを想いながら横にいない人生はきっと辛かったと思うけど、ジャックの気持ちが常に心の中にあっただろうから、それは幸せなことやね。
タイタニックファン友達の、碧洋のハートを海に返したのは、タイタニックの記憶を象徴するものとして大事にしてたけど、絵が見つかったから必要じゃなくなった、という解釈が良すぎた。最後の舞踏ホールのシーンはローズの人生を祝福するシーンらしい。