ぽるぴ

グランツーリスモのぽるぴのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.3
ハイテンポでスポーティな映像表現による臨場感の演出は、ニール・ブロムカンプ監督の得意分野であり今作にもピッタリとハマっている。グランツーリスモという題材はまさに彼向きではあったが正直期待以上である。カーレース映画として十分に見応えがある出来だ。
内容は夢を追う若者達の熱血スポコンドラマだが、個人的には3人のオヤジが印象的であった。デヴィッド・ハーバーは夢破れた男の哀愁を上手く表現しており、オーランド・ブルームは顔のシワが良い味を出していた。主人公のヤンが事故を起こした場面、ヘリで運ばれていく彼を見届けるオーランド・ブルームの心配と失望、行く先への不安が入り混じった表情は、これからの中年オヤジ役としての可能性を感じさせる。そして、何と言ってもジャイモン・フンスー演じるヤンの父スティーブである。出番は少ないものの、その泣き顔にはこちらの感情を容易に揺さぶる力があった。
満足度の高い作品だが、勿論残念なところもある。主人公ヤンの目的と手段が一致しない点だ。途中彼の夢は子供の頃からレーサーだと明かされるが、ならばなぜグランツーリスモをやっていたのか。リアルレーサーになる夢を追いかけて、その挑戦が失敗に終わり結果的にグランツーリスモをやるしかなかった、そういう展開ならば理解出来る。しかし、どうもそうでは無さそうだ。リアルレーサーになる為に延々とゲームをやり続けていたようにしか映らない。ゲーマーをリアルレースに参加させる企画が無ければ、彼はずっとゲームをしていたのか。父スティーブはプロのサッカープレイヤーだったのならば、その気があれば息子の才能を見極める機会を得られたのではなかろうか。「お前を応援しなかった」と、父から息子に謝罪があったが泣かされつつモヤモヤが残る。折角ジャイモン・フンスーも良い演技をするのだから、父と息子の関係に絡めつつヤンがなぜゲームをするのかを説明する展開が欲しかった。
総じて評価すれば、良くも悪くもいつものニール・ブロムカンプ監督作品である。絵的な面白さは保証されるが、人間ドラマはやや薄味。彼のファンであれば見て損はない。
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