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NEO PORTRAITSのxavierのレビュー・感想・評価

NEO PORTRAITS(2023年製作の映画)
4.0
技術の革新も良し悪しだなぁ…
日本の田舎の少し未来のお話。過疎化したこの町では"最先端テクノロジー"と"未だに変わらないもの"とか同居している。3ヶ月前に母親を亡くしたタクミは母の記憶から作られた対話出来る遺影(電子アンドロイド)をまるで故人そのものの様に扱う大人たちに不信感を抱いていた。しかし、担任のハナ先生だけは他の大人たちと違っていた…
ストーリーはこんな感じ。
指をタップするだけで空間に色々な物が表示される世の中。たとえば、朝起きてタップすると天井に今の時刻とその日の天気予報が表示される…何か便利だよね。

でも電子アンドロイドの遺影が普通に会話するのはどうなんだろうなぁ…
もうこの世には居ないのに、その遺影から
「おはよう!」って挨拶や「ちゃんと野菜も取りなさいよ」って心配する声が聞こえてくる。この作品の主人公タクミは、それが気持ち悪いって感じるんだよね。
そりゃ、そうだよね。生身の人間が喋ってるんじゃなくて機械が喋ってるんだから。
それなのに大人たちは、それを受け入れ会話をする…まるで生前と同じように。
そこにはもう悲しみなどないのだ。話しかけたら答えてくれるのだから…

学校での授業もタブレットだけで行われる
子どもたちは"本"という存在を知らない。
大人たちはその存在を知っている。都会に比べて田舎の方は遅れている技術もあったからだ。だからハナ先生が"本"を見せると子どもたちは驚く。まぁ、今でさえ教科書が紙媒体から電子媒体に変わりつつあるんだから、こんな未来考えられるなぁ…と思いながら観ていた。

子どもたちは解らないことがあると、すぐにその言葉を調べようとし"こんな意味なのかなぁ?"とか考えることすらしない。
"疑問に思うこと"と"考えること"をしなくなっていくのかなぁ…そう考えると怖いよね。自分で考えなくなるんだから。
国の偉い人が決めた事に盲目的に従い、それを正しいと信じる…そんな世界になっていくのかと思うと恐怖でしかない。
あの電子遺影だってその人の思い出をかき集めてAIに喋らせているんだから、一般的な事しか言えないんだもんね。もし子どもたちが体験することを大人たちが体験して居なければ話しても何の救いにも何の癒やしにもならないかもしれないしね…

そう考えると"変わらないもの"って大切なんだって思えたかなぁ…
20分そこらのショートムービーだったけど色々考えさせられました。
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