tomohitooguro

哀れなるものたちのtomohitooguroのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
マイオールタイムベストを塗りかえた!本当に大好きな映画。

映像が素晴らしい。魚眼レンズの映像が本当に効いてる。これ、もはやランティモス映画の代名詞とも言えると思う。
世界観にほんの少しデフォルメされたSFぽさがありそれも好き。ロンドンもリスボンもパリも街の映像がすごく良い。
音楽が良い。サントラヘビロテ確定。トレーラーで聴いていたあの曲に合わせて行われる騎乗位には思わず吹き出してしまった。そして唐突の不協和音。最高か。

冒頭の白黒パート。
ここはベラの状況を説明するようなパートではあるが、自分の娘と重ねて観てしまった。まじで子育てあるあるの大喜利状態で面白かった。グロいシーンを白黒で中和してるのねーとも思ったがカラーでも容赦ないグロがあったことから、この白黒の意味は前述した騎乗位へのアクセントのためなのだろう。あのシーンまじで笑う。

リスボンのパート。
ここではベラが欲望のままに生きることに目覚める。牡蠣を食べるシーンが良かった。自分は映画の性描写にはかなり厳しめな方だが今作は問題なしと思った。いやらしさを感じさせない演出に脱帽です。人間は誰かに縛られるべきではないということを再確認できる大切なパートだと思う。他人に迷惑をかけないことは前提にあるが誰でも自由に生きるべきである。不味いものは吐き出していい。
ダンスシーンがエグすぎた。なんて素敵なシーンなのか。基本的にリスボンパートのダンカンはまじで良いやつすぎて好きだった。少なくとも悪いやつとは思わなかった。

船のパート。
ここはこの映画のとても重要なパートだと思っている。ベラが老婆の文学的な表現に興味を惹かれ、哲学や文学に傾倒するシークエンスはまさに本能から理性にシフトチェンジするイニシエーション期とも捉えられる。そしてアレクサンドリアのパートで社会問題を目の当たりにする。人生の不平等を知った時の絶望とそれに対する行動に感銘を受けた。ハリーは良キャラ。

パリのパート。
ぶっちゃけ初めのうちはまだ性描写するんかい!と嫌気がしたが、このパートにおける性風俗の描き方はとても好感が持てた。このような仕事は世間では女性の権利の搾取とも言われるが、今作の描き方であればマイナスなイメージを持たずに観ることができる。今回のような性風俗だけでなく、どの仕事でも、本人が選んだのであればどのような仕事も他者が意見すべきではないのだと思う。生活のための仕事という社会の本質を如実に表現していた。流石に子供の性教育を行う場ではないと思うが(笑)

ラストのロンドンのシーン。
ベラとマックスが結婚を決める会話が素晴らしく良かった。まじで最高だった。
胸糞悪い有害な男性性の権化が現れたがオチのダシに使われていて素晴らしいエンロールも合間ってまじで最高!!

現状オールタイムベスト1位です。
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