tabi

哀れなるものたちのtabiのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
全く人にはお薦めできないけれど、ジュネやシュヴァンクマイエル、ハネケ、トゥリアー、タルベーラとかの好きな監督の好きな要素がヨルゴス・ランティモス監督というフィルターを通して再配置されているかのような感覚。自分好みの作品すぎて頭が痺れる。全然、消化できない。

幻想的で有機的な映像と静かで陰鬱な映像のコントラストも最高だし、劇伴も衣装も最高だった。人の善性や純粋さとインモラルな世界観が同時に成立していて、その中でずっと足元が揺らぐような不安定な気持ちにさせられる。
中でも、リスボンのダンスシーンがcarpe diemと言った感じで最高に生を謳歌してた。

追記:
少し時間が経って、漸く色々と落ち着いてきた。
女性への抑圧が背景にあるけれど、主題は解放とか自己決定権とかもう少し大きいものに思う。
出てくる男性陣はベラに対して、庇護、婚姻、所有(、変質)、支配といった形でマニュピレートを試みる。程度の差はあれど、自分の安心や理想のための枠内に留めようとするのに対して、本人は全く意に介さず自由に振る舞うのが輝いて見える。
本人も他者、世間、世界、社会構造と世界認識は発達していくし、周囲の人間も変わっている(変わっていく)ので、それが不安定さや緊張感に繋がる。エマ・ストーンの快演や不協和音、不思議な造形と全部、狂って調和しているのが改めて最高だった。
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