ぶみ

鯨の骨のぶみのレビュー・感想・評価

鯨の骨(2023年製作の映画)
3.0
大江崇允監督、落合モトキ、あの主演によるドラマ。
マッチングアプリで知り合った女子高生が自室で自殺したものの、忽然と死体が消えたことから、彼女を発見しようとする主人公の姿を描く。
主人公となるサラリーマンの間宮を落合、間宮の部屋を訪れた女子高生をあのが演じているほか、大西礼芳、横田真悠、宇野祥平、戸田昌宏、内村遥等が登場。
物語は、女子高生の死体を山に捨てようと穴を掘っているうちに、クルマから死体が消えるという、なかなか衝撃的な出だしでスタート、そこだけを考えると、Filmarksの本作品の紹介でもあるようにミステリ調かと思いきや、あの演じる女子高生が、ARアプリ上でのカリスマである明日香と瓜二つであったことがわかったあたりから、彼女の痕跡を追っていくという展開にシフト。
そこから、現実なのか、ARなのか区別がつかない演出が施されるため、最初は戸惑ったものの、ルールが理解できてくると、その独特な世界観はクセになりそうなもの。
特にARを扱っておきながら、CGやVFXを駆使したシーンは皆無であり、ほぼ実写で表現したのは良かったところであるとともに、流行り廃りが激しく、ネットの海で浮き沈みすることに一喜一憂している人々を描き出す社会派的な側面も持ち合わせているのも悪くない。
とりわけ、明日香の熱狂的な信者でARの世界にハマり込み、一線を越えてしまうこととなる男性・しんさんを、新興宗教を扱った城定秀夫監督の怪作『ビリーバーズ』同様、もはや怪しさ満点の演技をするのが通常運転かと思わせる宇野が演じているのはピッタリであるとともに、同じく、ここ最近、チョイ役ながら、出版社のような会社で嫌味なことを言う上司をやらせたら天下一品な戸田が、本作品でも十二分に持ち味を発揮していたのは見逃せないポイント。
また、あのの演技を見るのは初めてで、正直不思議キャラが先行している印象であったことから、ハードルを下げていたせいか、思いのほかと言っては失礼ながら、きちんとしていたのは驚いたところ。
クルマ好きの視点からすると、間宮が死体を運んだクルマがダイハツ・ミラジーノと思しき軽自動車だったのだが、荷室が狭いため、流石に死体を運ぶには後席を畳まないと積めないはずなのに、シートが立ったままであったのはリアリティに欠けており些か残念。
総じて、クセ強めなキャストを筆頭に、死体の消失、現代社会ならではのテーマ、消費されるコンテンツと、面白くなりそうな要素は揃っているのに、何故か手放しで面白かったとは言えなかったのが正直なところであり、どちらかと言えば、雰囲気作品にとどまってしまっていたのが残念でならず、妙な浮遊感だけが記憶に残った一作。

いつか私を見つけて下さい。
ぶみ

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