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パッチギ!のmskariのレビュー・感想・評価

パッチギ!(2004年製作の映画)
4.8
15年ぶりぐらいに観直して点数修正。

『愛の不時着』効果で北朝鮮と韓国との分断へ今一度ドラマチックに焦点があたった現在からさかのぼること約半世紀。学生運動盛んな1968年を舞台に生々しくもコミカルに、日本国内における在日朝鮮人と日本社会との分断およびそこに揺れる青春を描いた井筒和幸監督、2005年の快作。

京都の朝鮮高級学校番長 アンソン(高岡蒼甫)を兄に持つキョンジャを演じた初々しい沢尻エリカの目を疑うまぶしさは見どころではあるが、ここではあえてふれない。

飛び交う日本なまり関西弁風味の朝鮮語、ビーバップハイスクールを彷彿とさせるヤンキー描写に喧嘩シーン(タイトルよろしく繰り返し「パッチギ」を繰り出してくれる)、学生運動にのめりこむ友人、毛沢東語録を取り出す教師、強制徴用への怨嗟を漏らすハラボジ、釜山から密航した韓国青年、日朝韓入り交えての公園での宴。
喧嘩はコミカル要素としても、残りはなかなかに生々しい。実際ニューカマーもオールドカマ―も日本を拠点として生活する「日本の中のアジア」人コミュニティに足を踏み入れてみれば、また日本人同志と認識している周囲をよくよく見てみれば、しっかりと実感ともなう光景なのだ。

と、ここまで書いたが、本作を鑑賞するに無理に前提知識はいらない。沢尻エリカ、塩谷瞬、高岡蒼佑、小出恵介。なんでこんなことになっちゃったんだと感ずるもよし、真木よう子に余貴美子など光るキャスティングにうなるもよし。
身近にこんな兄ちゃんがいてほしかったオダギリジョーや大友康平の痛快極まる名セリフにも期待して、ぜひご覧いただきたい。
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