やー

座頭市兇状旅のやーのネタバレレビュー・内容・結末

座頭市兇状旅(1963年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

シリーズ第四作にして、もっとも悲しく、救いのない話だった。

かつて愛した女・おタネと再会する市。彼女の汚れなき美しさを瞼の裏に思い出す市だが、今やかつての清廉さはそこにはない。

おタネは市の首にかかった懸賞金のために、浪人の旦那に策を与え、市を罠にかける。

しかし、いざ斬り合いという段になって、市の命を奪うことに戸惑い、旦那を止めようとするおタネ。押し問答の挙句、彼女は愛する夫の手にかかり、命を落としてしまう……。

怒りに燃える市はおタネの旦那を斬るが、今際の際に男の口から彼女の裏切りを聞かされる。それでも彼女の裏切りを信じず、「おタネさんは美しい人だ」と叫ぶ市は、まるでその言葉を自らに言い聞かせているようだった。

物語の最後、一同との別れ際におどけて踊ってみせる市。しかし、やがて一人になると険しく、暗い顔に。

人の温もりを求め、人の清さを信じながら、もがき生きる市の心を容赦なく斬って捨てたおタネの裏切り。これまでも市は道中で刺客を斬りはらいながらも、その本心では人を信じ、人との繋がりを求め続けてきたが、そのたびに親しき人を失い、渡世の絶望を突きつけられてきた。

本作は、その絶望の集大成とも言えるかもしれない。
やー

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