キャッチフレーズ「英雄か、悪魔か」は正しくは「狂人か、愚か者か」の方が良かったのではないかと思うほど、戦争(と権力をめぐる闘争)の狂気と愚かさが、ナポレオンの人生を通して余すところなく描写された物語(リドリー・スコット監督の意図とは違うかもしれないが)。どうやって調達したのか理解できない武器、兵士、軍馬の数、しかもただのエキストラの寄せ集めではなく本物の軍のように統率が取れていて、それはやはり監督とスタッフの圧倒的な力量だと感じた。ホアキン・フェニックス演じるナポレオンに、『ジョーカー』のジョーカーのような神がかったようなカリスマ性は感じず(あえてそう演じたのか？)、彼に従った人々の心情は私には理解できなかった。
