まつき

ナチ刑法175条/刑法175条のまつきのレビュー・感想・評価

ナチ刑法175条/刑法175条(1999年製作の映画)
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『大いなる自由』公開を記念した特別上映イベントで観た。かつてのドイツを舞台とした同作で描かれた法律、男性同性愛を禁ずる「刑法175条」について、題材にしたドキュメンタリー映画。ナチスによって同性愛者が迫害された時期に主にスポットライトを当てている。1999年アメリカ製作。今イベントでの上映期間は7/21〜7/23のたった3日間のみで、しかも35mmプリントのフィルム上映という特別感から鑑賞を決めた。

実際に迫害を受けた複数のゲイ男性とひとりのレズビアンが登場し、体験談が語られる。いずれも1910年〜20年頃生まれで、撮影時期を考えるとおよそ80歳〜90歳。存命中に当事者の声や表情を、映像や音声として記録できたことの意義は大きいと感じた。

題材が題材なだけに、暗く重苦しい内容を予想していたし、実際そうした時間が大半を占めるが、意外にも微笑ましいエピソードもいくつか語られ、心温まる場面もあった。「ナチス台頭前のベルリンでは違法とされながらも同性愛のコミュニティが盛んであった」、「女性だらけの環境で暮らすことになったが耐えられず男性目当てで志願兵になった」など、笑顔で回想していたのが印象的だ。

そうして「愛」や「幸せ」が語られるからこそ、ナチスがした非道な行いの残酷さと、彼らの喪失や心に負った深い傷がより一層強調されるように感じた。「刑法175条」とそれを自らの目的のため過度に悪用したナチス、それにかこつけて暴力をする免罪符とした人間の醜さ、それらが奪ったものは、「愛」や「幸せ」など、人間が人間らしくいるために守られるべき大切なことだと感じた。
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