映画が瞬間をとらえるアートフォームだとして、杉田協士がつかむ範囲はより狭くタイトに、例えばひと部屋の中の人の動きをつぶさに見る。その場面では境遇や悲しみが具体的に語られることはないのだけれど、その奥には、物理的に画面に映っていない背景が、なぜか見えてくるような気がする。
舞台挨拶での監督の話を聞くと、事前の打ち合わせはほとんどなく、現場でセッション的にその場に合った導線などを作り込んでいるようで、
やはり、その場所の刹那をとことん見つめるということなのかと思った。スタイル的にウォン・カーウァイを連想する。だが、こちらの世界はもっとやさしい。とはいえ、個人的に好きだった前作『春原さんのうた』に比べると、人物の背景はちょっと感じづらかったな。
また、監督の言葉によれば、編集中に丁寧に足されていく音響を聞きながら、これは水の映画なのだと気づいたとか。印象的な川のせせらぎも美しく納得した。
