ABEKOTAROUX

キラー・ナマケモノのABEKOTAROUXのネタバレレビュー・内容・結末

キラー・ナマケモノ(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

動物としてのナマケモノの特性を活かしていない、というコメントが散見される。わかります。

わかる、が、製作陣は明確にそこをあえて目指していない。アルファくん(メスかも知んない)には薬物知識もあるしPC使うしスマホ使うし情報操作するし瞬間移動するし車運転するし銃も使うし日本刀も使おうとしていたし、最終局面では苦笑必至のおどろきのパロディもやってしまう。たしかに、べつにナマケモノじゃなくても成立する話ではある。
まああくまで推測になるのだけれども、アニマトロニクスでかわいいナマケモノを動かして映画を作りたい!という気持ちだけで始まってしまった企画なのだろう。そして目指すは「俺の考えたちょうどいいB級映画」である。

ダレる中盤も、ご都合主義も、終盤の大虐殺&一騎打ち展開の盛り上がり、ハッピーエンドになっていない主人公の選択も、おバカB級映画としては及第点はしっかり残しているといえるはずだ。

じゃあ、「B級映画」という免罪符があれば、まっとうな批判に対しても全方位無敵になってしまうのかや!?という問いももっともである。

しかし、この映画は、編集・美術・音楽・撮影がめちゃくちゃ良いのである。アニマトロニクスの人形があっても、映画がチープになっていないのはこのあたりの製作陣の力量、センスが良いからであろう。
カット割りの構図・編集のキレはよく、夜明けにさしかかるにつれて光量が増えていく停電中の館はスリリングだし、インフルエンサーと寮内投票という、どちらも部外者からは心底どうでもよい価値観にしばられている寮生のみなさんの異常性は、謎にカルト色の強い投票場面の美術演出にうまく表現されている。あんなのほんとうにあるのかな。
あと、人が消えているのに(われわれ日本人が親しんでいるものとは少し違う)ドッヂボールやら日常を楽しんでいる人間たちが奇妙である。
結局、アルファくんによる巧妙な情報操作で、引っ越したことになっていたのは笑った。

つまり、しっかりした映画づくりの技術、センスに支えられているからこそ、ようやく、ナマケモノが強すぎて意味わからんし、話もダレたりもするけど最後までみたらなんか面白かったよね、ナマケモノが強すぎるのも許す!ご都合主義も許す!映画館で観て良かったわ、と、見ている側が胸を張って言えるのである。

しかし胸を張っておススメできるかといわれると、映画館ではなくおうちでだらだらみていたら中盤、けっこうつまらなくて寝てしまうかも。
もちろん、B級映画を愛する素質のある人には、おすすめです!
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