あやこ

52ヘルツのクジラたちのあやこのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
3.7
52ヘルツのクジラは、世界で一番孤独なクジラと言われている。鳴き声があまりに高音で、他のクジラたちにはその声が聞こえないからだ。
それでも、52ヘルツのクジラは広い海の中で一生懸命に鳴く。高らかに。たった一頭でも、自分の声を聞こえるクジラがいることを信じて。自分の鳴き声に鳴き返してくれるクジラに会えることを信じて。
とても寂しいから、とても悲しいから鳴いてるのかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。「ぼくはここにいるよ」「いっしょに遊ぼうよ」って明るく歌っているかもしれない。
もし、52ヘルツのクジラが自分の声は届かないと絶望して鳴くことを止めてしまったら、このクジラは生きていても死んでいるのと同じこと、なのではと思う。
だから一生懸命に鳴く。誰に声が届かないとしても。
もしかすると、自分が自分の声を聞くために鳴いているのかもしれない。


いっぽうで人間は、
本当に、本当に、寂しいとき悲しいとき苦しいときは声をあげることができない。自分の体験上、自分の中に溜め込んでしまって、外に出す方法がうまく見つけられないから、自分を傷つける。その痛みは間違った快感と安心を与える。後で後悔もするし、罪悪感ももの凄い。

人の声なき声を、SOSのちいさな声を拾い上げてくれるのは、(※劇中から拝借します)本物の「魂の番」だけなのだろう。番とまでいかなくても、「魂の仲間」でも良いのだろう。この人といるとほっとするなとか、居心地がいいなとか、ずっと一緒にいたいなとか。合う合わない、人にはあると思うけど、前者が「魂の仲間」なんだと思う。

自分の弱さを、身内や他人を振り回して傷つけるナイフにするんじゃなくて、
その弱さを絆創膏にして、おなじ弱みを持っている人、傷ついている人に「痛いよね」って貼ってあげられる人でありたい。
アンさんやキコやミハルちゃんのように。


安吾のお母さんが言ってて忘れたくない言葉
「息子でも娘でもいいから、生きていてほしかった」

西野七瀬ちゃん、久しぶりにお芝居見ましたが
凄かった。悪役って、マジもんを見るとその役者さん自体を嫌いになる、もう作中に出てこないでほしいみたいな、そんなのが割とあるんですけど、それクラスでした。マジもんのヤベェ女でした。言葉の汚なさも、声の荒げ方も、
水ぶっかける勢いのガチさも、お芝居ホントに上手かった。
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