千年女優

アイアンクローの千年女優のレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.0
60年代から70年代にかけてヒール・レスラーとして活躍して「アイアンクロー」の異名で知られた元AWAヘビー級王者フリッツ・フォン・エリックの次男ケビン。幼い頃に死別した長男に代わって四人全員がレスラーを志す兄弟のまとめ役を担う彼が、厳しいプロレスの世界で次々不幸に見舞われる弟達の姿に対峙する様を描いた伝記映画です。

フリッツを筆頭に息子五人に孫三人と公開時点で九人のレスラーを輩出してWWE殿堂入りを果たしたフォン・エリック・ファミリーをカナダ人監督ショーン・ダーキンで映画化した2023年公開の作品で、ファミリーの地元テキサスでお披露目された後に米国ではA24、英国ではライオンズゲートが公開されると批評家と観客から好評を得ました。

ミッキー・ロークが熱演を見せた『レスラー』と同じプロレスを題材とするスポーツ映画でも、このジャンルお馴染みの「やめられぬ」矜持ではなく、その陰に隠れがちな憫然たる実状を悲劇の家族物語から描きます。自分が自分であることを示す「誇るべきもの」が一転すればアイデンティティを瓦解する諸刃の剣となる普遍を描く一作です。
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