MasaichiYaguchi

ビニールハウスのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
3.7
本作は、韓国で正規の住宅を失った低所得者層が、農業施設であるビニールハウスで暮らす事例などをベースに、貧困や孤独、介護など現代社会が抱える問題に根ざした物語が展開していて、見ていてヒリヒリします。
貧困の為にビニールハウスに暮らすムンジョンは、少年院にいる息子と再び新居で暮らすことを夢見ている。
その資金を稼ぐ為に盲目の老人テガンと、その妻で重い認知症を患うファオクの訪問介護士として働いている。
或る日、ファオクが風呂場で突然暴れ出し、ムンジョンと揉み合う際に床に後頭部を打ちつけ、そのまま亡くなってしまう事故が起きる。
ムンジョンは認知症の自身の母親をファオクの身代わりに据えることで、息子と一緒に暮らす未来を守ろうとするが、その綱渡りのような日々に、更に不測の事態が連鎖していく。
第27回釜山国際映画祭で3冠に輝いたキム・ソヒョン主演の本作は、名門映画学校・韓国映画アカデミーで学んだ29歳のイ・ソルヒ監督が、認知症の祖母と、祖母をケアする母親の関係性から着想を得てオリジナル脚本を執筆し、自らメガホンをとった映画。
本作のポスターやフライヤーには「半地下はまだマシ」というキャッチコピーがあるが、正規の住宅を失った韓国の低所得者層、移民労働者がビニールハウスに転がり込むなど、半地下や屋上部屋より社会問題化した「最底辺」の住居から抜け出そうと藻掻く主人公の地獄巡りは凄絶を極める。