千年女優

ビニールハウスの千年女優のレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
3.5
ビニールハウスに一人暮らすシングルマザーで、少年院にいる息子とのアパート暮らしを願って盲目の老人テガンとその妻で認知症を患うファオクの介護を務めるムンジョン。ある日不慮の事故でファオクの死を目の当たりにした彼女が、同じく認知症を患う母親を退院させて身代わりにすることで起こる悲劇の連鎖を描いたスリラー映画です。

ポン・ジュノらを輩出した韓国映画アカデミー出身の女性監督で短編作品で評価を高めていたイ・ソルヒが、監督のみならず脚本と編集をも手掛けた彼女の長編映画監督デビュー作で、韓国では社会問題にもなっているビニールハウス住まいを題材にしたスリリングな物語が評価されて青龍映画賞や大鐘賞の新人監督賞にノミネートされました。

始めは限られていたはずの綻びがあれよあれよと広がっていく様を追い続ける中年女性の転落スリラーで、設定や展開の類似点から深田晃司の『よこがお』を連想させます。長所と短所も似通っていて、些か作劇は意地悪で特にラストは強引さを感じさせますが、筒井真理子と同等の存在感を放つキム・ソヒョンが作品全体を牽引する一作です。
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