ふわもこベビーポンチョ

Ryuichi Sakamoto | Opusのふわもこベビーポンチョのレビュー・感想・評価

Ryuichi Sakamoto | Opus(2023年製作の映画)
4.6
教授の監修した音響設備で体験できてよかった。キャラメルポップコーンにヴォイドがほとんどなくて、「当たり」の美味しい部分を堪能することができた。109シネマ新宿はかなりオススメ。

ピアノの単音が少しづつ解けて、空気中にたゆたって、やがてもとの沈黙へとかえっていく...。あの弛緩のプロセスひとつひとつがからだ全体になんとも心地よくて、溢れでてくる音という以上の限りない叙情にただうっとりと身を任せていた。それ以上のことは何もなかったが、それだけでよかった。

彼の演奏は魂をのせてはじめからおわりへとゆるやかに進むビークルみたいだ。乗り物が発進するときの、クッと軽く体をひかれる淡い期待に近い感覚が、僕を大きく暖かなサウダージへと誘う。教授の音は、楽しい。もちろん痛切で、強烈で、繊細でもありながら、結局音楽を人一倍愛した彼の出す音は楽しいのだ。そのシンプルで単純な高揚は、教授の音楽を抱きしめてはじめて足の踏みだし方を
思い出したあのときから、自分の中に確かに息づいていると感じる。


ボクニハ ハジメトオワリガ アルンダ
コオシテ ナガイアイダ ソラヲミテル
オンガク イツマデモツヅク オンガク
オドッテ イルボクヲキミハ ミテイル...

(バレエメカニックはなかったけれど。)