金宮さん

アメリカン・フィクションの金宮さんのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.5
作家性とはなんぞや?というクラシカルなテーマを用いて、ポリコレビジネスという最新型の皮肉対象まで深掘りする。

売れ線や賞狙いなどではなく、本当にクリエイトしたいものを表現しているのか?はまあ手垢がついた議論。

その具体的ケースとして、社会問題に敏感な層に「ウケる」要素を散りばめる「マーケティング」された作品ってしょうもないよねーを題材としているのが今作の特徴。割と賛同するし頭にちらつくタイトルもちらほらあったりする。

主人公と、おそらく監督自身も、ポリコレビジネスにおけるステレオタイプをとにかく嫌っており、その点はひたすら潔癖。でもなー、そもそも今作自体が偏見を持っている人への偏見がフルスロットルなんです。他にもゲイの描きかた大丈夫か?と思ったりするんですが、大元の「偏見を揶揄してる」というテーマ構造だけを頼りに「わかってやってるんだろうなあ」と無理やり飲み込んでしまうメタ的な説得力がある。でも実はこのレトリックだけっちゃあだけの作品。作家性とはなんぞや?

個人的にはそんなテクニカルなことされなくても、その確からしさは、台詞や演出から漂う信用度だったり、作品に至る文脈つまり作者のこれまでで判断しますよと言いたい。

本居宣長&小林秀雄先生の言葉を借りれば、「姿は似せ難く、意は似せ易し。」というか。アウトプットとしての「姿」をどう選択して表出するかにこそ作家性がでる。

そういう意味では、今作の「姿」はドヤ顔が透けて見えあまり好みではない。しかも肝心な、主人公が忌避してるfではじまる小説の「姿」の詳細がいまいちわからず判断がつかない。

一方で、こんな感じでダラダラ書いてしまうくらい思考を促してくれる良作なのは間違いなく。いやーテクニカルだったなーという、なんとなく「怪物」を鑑賞したときと同じ感覚になってる。

メッセージは滲み出して欲しい。ドヤって直接言及されると中学生の弁論大会みたいに青臭くみえてとても冷める。という私自身のわがままを再実感している。
金宮さん

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