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異人たちのMrNOのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.5
原作未読、大林信彦版「異人たちとの夏」は上映当時に鑑賞しています。だからどうしても大林版と比較してしまう。

大林宣彦版を見たのはあまりにも昔すぎて(36年前)だいぶ忘れているけど、暑い夏にランニング姿の鶴太郎、浅草の今半で家族3人で囲むすき焼き鍋は覚えてる。ラスト急にホラーになって感動がパーになったのも。

大林版では、同じマンションに住んでいて出会う二人が、風間杜夫と名取裕子で描かれていた、ヘイ版はゲイ同士に置き換わっています。前半はかなりゲイ要素が強く、鈴木亮平のエゴイストほどではないにしてもセリフもメイクラブシーン、ゲイ専用ディスコシーン、もリアルですので、そちらの下世話な印象が強くなってしまうな。
アンドリューヘイ監督自身がゲイを公表してるから、個人的な経験も踏まえてるのかもしれません。

死んだ両親に、ゲイと告白する時のお互いの葛藤も重要なファクターでここは大林版にはない部分。

このほかのストーリーは大林版をなぞっています。ただどうしても現代のイギリスと昭和の日本ですから、亡くなったはずの両親とで会う時のノスタルジー感はなかなか鶴太郎と秋吉久美子にはかないません。
セーターが古いな、時計が古い(カシオ?)、かけるレコードが古い、くらいかな。
ただ、大林版であったラストのホラーシーンはないので、こちらの方が純度高くエンディングを迎えます。

登場人物は極端に少なくて、セリフがあるのはアダムと恋人のハリー、父母の4人だけです。しかもほぼ、あの世の人です。

映像や音楽は「アフターサン」のような雰囲気です。

主人公がゲイの設定なので、流れる音楽も
、フランキーゴーズトゥーハリウッドやペットショップボーイズ(どちらもメンバーがゲイ)や主人公の子供の頃の部屋にあったイレイジャー(ボーカルがゲイ)のレコード、などその手のが目立ちます。

特にペットショップボーイズのオールウェイズオンマイマインドは沁みますね。
この映画の親子、恋人〜決して結ばれない異人との想いを歌ってるようで沁みます。
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