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サンクスギビングのRのネタバレレビュー・内容・結末

サンクスギビング(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2023年のアメリカの作品。

監督は「ホステル」のイーライ・ロス。

あらすじ

感謝祭(サンクス・ギビング)発祥の地マサチューセッツ州プリマス。一年に一度の祝祭に沸き立つ人々だったが、突如ダイナーで働く女性が何者かに惨殺される事件が発生。その後も1人、また1人と住民たちが殺されていく中、地元の高校生グループ、ジェシカ(ネル・ヴァルラーク)たちはある日、「ジョン・カーヴァー」を名乗る謎のインスタアカウントの投稿にタグ付けされたことに気付く。そこには豪華な食卓が用意され、自分たちの名札が意味深に配されていた…。

12月で下手したら1番楽しみにしていた作品。

奇才イーライ・ロスの最新作にして、「ある映画」を観た人ならば「待望の」映画化作品でもある。

そのある映画とはあのタランティーノとロバート・ロドリゲスがタッグを組んで、当時ジャンル映画を2、3本立てで上映していた映画館の雰囲気を忠実に再現した2007年のアンソロジー作品「グラインドハウス」。そこではタランティーノとロドリゲスがそれぞれジャンル映画らしい長編を二本立てで一本の作品にまとめているんだけど、それら作品以外のブリッジとして実在しない映画の予告編いわゆる「フェイク予告」が何本か入っていて、要は今作はその時のフェイク予告の16年経って待望の映画化となった作品というわけ。

ちなみに、そのフェイク予告、名だたる映画監督によるジャンル映画愛に塗れた内容となっているんだけど、そのうちのロドリゲスによる「マチェーテ」シリーズとジェイソン・アイズナーによる「ホーボー・ウィズ・ショットガン」は過去に映画化されているんだけど、今作が今のところ、その中でも(実写化を前提に置くならば)1番スパンが空いた作品となったわけで、そうなってくるとエドガー・ライトの「Don't」の映画化も待ち望まれる(まぁ、あれは作品の特性上映画化するのは難しそうだけども)。

で、脇道に逸れまくったわけだけど、肝心の映画の話、結論から言うと抜群に面白かった!…ただ、フェイク予告編と見比べちゃうと、うーんとなっちゃう部分もあったという感じ。

お話はあらすじの通り、感謝祭(サンクス・ギビング)を舞台にしたスラッシャーホラーな内容となっているわけなんだけど、まず日本人には馴染みの薄い「感謝祭」とはなんぞ?ってことなんだけど、アメリカやカナダなどで祝われる祝日の1つであり、いわゆる「収穫感謝日」。アメリカでは毎年11月の第四木曜日に設定されており、七面鳥などの豪華ディナーを家族で囲んで、テレビでアメフトなんかを見る日ってことらしい。日本でいうところの正月とかお盆みたいな感じ。ちなみに、本作の街の象徴であり、殺人鬼のマスクとして出てくるジョン・カーヴァーなる人物は実在していて、舞台となるプリマスという街にかつて上陸した清教徒であり、そこの植民地を創設した人物ということらしいね。

で、日本だと近年は勤労感謝の日がそれに無理やり当てようとしているきらいがあって、そこに各社翌日が金曜日ということで「ブラック・フライデー」というセール大感謝祭を設定している流れが近年グングン強くなっていると。ハロウィン然り、日本はこういう商売根性逞しいよな笑。

で、そんな本作、まずのっけからスラッシャーシーンとはまた別のオープニングが白眉。「ブラック・フライデー」の流れから、どうやら劇中のプリマスの感謝祭でもセールが行われているらしく、町1番の大型量販店「ライトマート」で売り尽くしセールが行われることになるんだけど(目玉はワッフルメーカー!)、今か今かと回転を待ち望む人が暴動寸前、長蛇の列で並ぶ中、そのうちの主人公で「ライトマート」のオーナーで町1番の大金持ちトーマス(リック・ホフマン「監獄島」)の一人娘ジェシカがいる仲良しグループが裏口からマート内で一足先にお買い物をしている様子を外から敵対するグループが発見されてしまい、暴動が遂に勃発して開店前に人々がマート目掛けて雪崩れ込んだことによりマート内は一瞬にして地獄絵図に…。

群れ成して100名限定のワッフルメーカー目掛けて買い物客が押し寄せる中、粉々になった扉のガラスで首にガラス片がぶっ刺さり失血死してしまう客、押し寄せる人の群れで扉の下敷きになり圧死してしまう警備員など、物欲MAXでワッフルメーカーを取り合う買い物客の必死な形相含めてまぁー醜い醜い。

ただ、これは近年「ブラック・フライデー」で財布の紐が緩みっぱなしの俺含めた観客側も人ごとではなくて、客観視したらみんなこうだよという、イーライ・ロスなりの皮肉の効いた残虐シーンとなっており、描写としては抜群に楽しいんだけど、やっぱちょっとゾッとしてしまう。

で、特にマートの主任ポジのミッチ(タイ・オルソン)の奥さんのアマンダ(ジーナ・ガーション「サン・セバスチャンへ、ようこそ」)の最期が特に悲惨。夜中に頑張るミッチのために差し入れを持っていったとこほ、不運にも暴動に巻き込まれるんだけど、人の群れに押し出されて床に倒された挙句、太っちょおばさんのものすごい勢いのカートで頭を吹っ飛ばされて首の骨を折って死亡、カートの車輪に巻き込まれたアマンダの髪の毛に気づかず、強引にカートを動かした結果頭皮の皮ごと引っぺがされるというおまけ付きという…いやぁ可哀想過ぎる…。

で、そんな暴動の中、事態を収束させようと町の保安官ニューロン(パトリック・デンプシー「魔法にかけられて2」)が天井に向かって「やめろー!」と威嚇射撃するショットからの「Thanksgiving」の血みどろタイトルバック、バーン!!「映倫」マークキラーン✨これぞジャンル映画なタイトルが100点すぎる笑。

で、そっから一年後、事件は「ライトマート」ならぬ「ファイトマートの悲劇」とニュースに取り沙汰される中、遂に殺人鬼ジョン・カーヴァーによる殺人劇が幕をあけるんだけど、まぁ覚悟はしてたけど、流石「ホステル」「グリーン・インフェルノ」のイーライ・ロス、グロ全開の痛々しい描写が満載!!

まずは序盤、予告でも出てきたアマンダを結果的に殺してしまったダイナーのおばさんが標的になるくだり。夜な夜なカーヴァーに追い詰められて殺されちゃうんだけど、ダイナーにある冷蔵室みたいなところのキンキンに凍った鋼鉄の扉に顔面押し付けられてほっぺたの皮膚が引っぺがされた後、命からがら逃げた先でカーヴァーの乗ってた車に追い詰められて、鉄製のゴミステーションに逃げ込んだまま突っ込まれて下半身真っ二つで死亡。翌朝、ライトマートの看板のトレードマークの星のてっぺんにはらわたがはみ出たまんまの下半身だけが飾られるという悪趣味極まりないファーストキルに唸らされる(どうやって夜な夜なそんなところまで担いだんだ笑笑?)!!

その後もドリルみたいのを腹にブッ刺されてリールで仕置人ばりの殺人術で首チョンパにされたり、両耳に尖ったものブッ刺されたあげく、電鋸に押し付けられてはらわた出ちゃったり、パワープレイで頭を真後ろに拗られちゃったり、ミートテンダーで頭を何度も叩き割られたりとマジで観終わった後しばらく肉系を見たくなくなるほどグロのオンパレードなんだけど、今作の殺人鬼カーヴァーの特徴としてはとにかく速技ってこと。それはもちろん殺人のスパンが短いってこともあるんだけど、いい点としては標的が殺人鬼の存在を察知してから殺されるまでの他の映画にある「殺人鬼がどこから出てくるの?出てこないの?どっちなの!?」の不安描写がとにかく短いって点!!まぁ、それに関してはホラー好きな人からしたら物足りなく感じる部分だと思うんだけど、俺みたいなホラー適正のない、そういう予感描写が入ると劇場でも目を覆って身構えちゃうくらいのチキンからするとめちゃくちゃありがたくて、そういう意味ではホラー苦手な人で、なおかつグロ描写だけ観たい!という稀有な層からすると利害が一致しているというか笑、とにかくノンストレスで観続けることができる。

それでなくても、後半に待ち受けるカーヴァーのそれまでの犠牲者を使った殺人料理のシーンに至るまで下準備も大変だったろうに、どうやったらそんな短いスパンで凝った殺人できるんだっていうツッコミありきでめちゃくちゃ仕事が早くてデキる殺人鬼だった。

また、殺人鬼にしては人間味が垣間見えるシーンもあって、それが顕著なのが、2番目に殺されるマートから逃げ出した警備員が殺される場面。首チョンパになってそいつが殺された後、カーヴァーが帰ろうとしたところ、警備員の飼い猫がその姿を見つめているのに気付く→殺されちゃう!!と思ったら、その猫ちゃんをヨシヨシして餌をあげて、その猫ちゃんが餌をパクついてるバックで飼い主の警備員の首チョンパの死体から血が溢れ出てるというショットに微笑ましくも笑ってしまった。

あとは終盤にかけてメインディッシュ、トーマスの継母キャスリーン(カレン・クリシェ「ターキー・ドロップ!最悪なジンクス」)が拉致された後、下準備されちゃうシーン。昏睡状態から目覚めた後、隙をついて逃げ出そうとカーヴァーと命懸けの隠れんぼ状態になるんだけど、そのシーンが無駄に長い!そこに至るまでの流れの中でも、仕事ができる割にジェシカとの追っかけっこでもたついたりとここら辺はスラッシャー映画の中だと「スクリーム」の殺人鬼を彷彿とさせる動きだったりで、まぁ怖さは減っちゃうけどハラハラしちゃう要素だったかなぁ。

まぁ、そこら辺のバランスも含めて、なかなか味わい深い殺人鬼だったんだけど、主人公ジェシカ含めた仲良しグループのスクールカースト最上位丸出しのジョックス感、ジェシカの今彼のライアン(マイロ・マンハイム「ベツレヘム・ジャーニー 星の導き」)の容疑者としては100パーの怪しい感じでやなやつ感、そして標的圏外ながらやたらキャラの濃ゆいヘビメタバンド好きの兄弟、特に兄貴の終盤にかけてのナイスアイストのいいやつ感と、とにかくキャラクターのルックが今っぽさを抑えつつもみんな良くて尚且つ総じてみんなイケメン美女揃い(特にギャビー役のアディソン・レイ(「ヒーズ・オール・ザット」)!!

ここら辺の殺人鬼との生き残りをかけたサバイバルも「スクリーム」や「ラストサマー」を筆頭にしたティーン向けホラーの要素をしっかり抑えていて見応えがあった。

ただ、今作事前にフェイク予告編を予習とばかりに再鑑賞したのが逆に不満点に繋がった部分もあって、要は予告でもあったインパクトのある殺人が今作でも改めて描いているんだけど、例えば中盤、ジェシカの元彼が所属するアメフトチームのライバルが殺されちゃうところで、その彼女のチアリーダーがトランポリンするシーンがあるんだけど、予告だとトランポリンしながら上半身脱ぎ出しておっぱいボヨンボヨンしたまま、トランポリンの下から殺人鬼が突き刺したナイフでカンチョーされて死んじゃうんだけど、おぉ!そのシーンが観られるのか!と思ってワクワクしてたらそのチアリーダー脱がないし、刺されるところも足の腱だったり、腹部で微妙に違ってて、鈴木雅之じゃないけど「ちがうちがう、そうじゃない〜♪」てなっちゃったよw

あとは、キャスリーンのシーンもそう。予告でもあったオーブンで「上手に焼けました〜!」されて、人間七面鳥にはされちゃって、そこは観たいもんが観れた感じはあるんだけど、予告とは違って服着たまんま焼き上がってて七面鳥感があんまりない上に、人間の首と七面鳥が合体したあの死体描写がなくて物足りない!!ここら辺含めてR18な分、レーティングを下げたからなのか、全体的に作り手の試行錯誤が垣間見える。

まぁ、感謝祭パレードの七面鳥の着ぐるみのまま、首チョンパのシーンはしっかりあったりしたんだけど(その際に顔面後方から装飾ブッ刺されるおじいちゃんの二次被害かわいそう。)、うーんもっとロストらしい過激なやつが観たかったかなぁ。

あと、肝心のカーヴァーの正体も終盤にかけてなんとなーく3人くらいに絞られて、ジェシカの今彼のライアンか元彼のボビー(ジェイレン・トーマス・ブルックス)かなぁとあたりをつけたんだけど、結果的に犯人だった人物はそうじゃなくて、まぁ俳優の人選的にもまぁ納得できるものの、そうなるとその後のボビーとライアンの動かし方が雑に感じちゃって、まぁボビーはわかるものの、1番怪しかったライアンなんかすげぇ扱いに困った挙句に一番どうでも良い感じになったまんまだったのは残念。ここら辺はライアン役の俳優さんがどうやらディズニー御用達の俳優だった兼ね合いだったり、ギャビー役の子もインスタのフォロワー数がものすごいいからか、結局死ななかったりと両者ともあんまりイメージ下がることできなかったのかなぁ…と穿った見方をすると、日本でいうところのアイドル俳優の起用に似た「大人の事情」を感じてしまった。

あと、カーヴァーとの攻防の後、一件落着して、救出からのみんな集まっての無事だったのね!と一安心→しばらく経って事件はも終息しつつ安心しきってからのワァー!とお決まりの終盤の展開がめちゃくちゃ巻きに巻きまくった感じでどうしたの?って感じ。なんかせっかくのクライマックスの感慨も台無しだよ笑。

まぁ、ボビーとライアンの因縁やカーヴァーの生死不明で終わる感じもあって、続編ありありな感じで終わるんだけど、どうやら本国で大ヒットの後押しもあり、早々に続編製作決定したらしく、この感じでいくならば、やっぱ続編も観たくなるってもの。

カーヴァーのルックも含めて、「スクリーム」並みのアイコニックな殺人鬼映画になる可能性も大いにある作品であるとは思います。まぁ、続編はもっと凝った殺人&死体描写を入れ込んで、ロス監督続投はマストであることを願いつつ…期待してます!!
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