カバディダック

雪豹のカバディダックのレビュー・感想・評価

雪豹(2023年製作の映画)
4.3
チベット語/漢語、自然/人間、伝統的価値観/近代的価値観・資本主義、地方/都市、独立した生活/国家の管理……さまざまな両極的要素がぶつかり、溶け合う現場を目撃する映画。雪豹はその接点である。

単純な二項対立ではない。
雪豹を聖なるものとして認め、聖地ラサへの巡礼を望む老人はケーキを喜び、飛行機にのることに胸を踊らせる。辛いインスタントラーメンなど食べないし国家の制度を度外視するジンパは、殺された羊=金を第一に考える資本主義者である。ラサから来たディレクターはダンサーの恋人(彼女はジンパの嫁とも対比される)とモダンな生活を送っておりスマートフォンで四六時中やりとりしてるが、もとはチベットの地方出身で両方に足をかける存在。その同級生の僧も雪豹を神話的に感じるが、高性能カメラに夢中である。

この複雑でごちゃ混ぜな様相を、監督は見事に示してる。

個人的には、アラスカの山でカメラを持ち去った一匹のオオカミとの出会いについて記した星野道夫のことが思い浮かぶ。人間の思惑とは別に彼らは生きる。しかし、目と目が合い、意思が火花のように通じる瞬間もある。

もっと監督の映画を見たかった…!