R

ゴールド・ボーイのRのネタバレレビュー・内容・結末

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

※全編ネタバレしてます!

映画館で。

2024ねんの日本の作品。

監督は平成ガメラシリーズの金子修介。

あらすじ

ある日、義父母を崖から突き落として殺した男、東昇(岡田将生「ゆとりですがなにか インターナショナル」)の殺人現場を目撃した3人の少年少女たち。それぞれ複雑な家庭環境や家族の問題を抱える少年たちは東を脅してなんとか大金をせしめようと画策するのだが…。

シネマトゥデイの記事で初めて知って、予告の不穏さもあってなんだか面白そうだったので土曜日に観てきました。

どうやら元々の原作は中国の「悪童たち」という作品で向こうでドラマ化した際もかなりの人気があったとか。観てみるとなるほど確かに舞台となる沖縄のカラッとした感じがドラマ版はもちろん観てないんだけど、なんとなーくアジアンなテイストを感じさせる。

で、その上でなんと言っても注目があの「平成ガメラ」シリーズや実写版「デスノート」を撮った金子修介による久方ぶりのメジャー作品という点!!まぁ、例えば昨年も「百合の雨音」という作品があったりと俺が知らないだけでコンスタントに作品自体は作ってる感じではあるんだけど、俺自身、ガメラシリーズはBlu-rayボックスはAmazonのセールで買ったものの恐れ多くて未だに観ておらず、監督作で観た作品と言えば「デスノート」2作と「学校の怪談3」それと上戸彩の「あずみ」をうろ覚えながら観たかなーくらいの完全に金子修介弱者からすると久しぶりに名前聞いたなーという失礼状態なわけで。

で、その上で俺の監督の印象はというと、もちろん面白い作品が多いのは分かってるけど、「デスノート」実写とかもちろん大好きな作品だけど、反面ルックのダサさも拭えない感じはぶっちゃけあった。

ただ、実際今作を観てみると、これが御年68歳になる監督が撮った作品かよ!ってくらいめちゃくちゃ才気走ってるやないか!!
上記のアジアンテイストからなる全体的に異国感漂うロケーションの妙だったり、その上でのバキッとクリアなカメラワーク然り、演者同士の全編に渡る「騙し合い」の緊張感然り、まさにどれをとっても一級品で、いやぁ本当になめててすいませんでしたぁ!という感じ。

その上でやはり目を見張るのは主要人物を演じた俳優陣!!

大企業東グループの婿養子であり、義父母を崖から突き落としてしまう東昇を演じたのはご存知岡田将生!!岡田将生といえば、もちろん顔立ちは一度はこんな顔で生まれてみたいもんだと思うくらいの超絶ハンサムなんだけど、時々番宣などで垣間見える天然というかチャランポランなイメージだったり、特に「告白」や「悪人」、あとは個人的には嫌いになれない日本版「CUBE」などのシリアスな悪役を演じる際の圧倒的な「サイコみ」と「胡散臭いニヤケ顔」だったりと、どこか「信用できないイケメン」っていうイメージだったけど、今作はまさにそんな彼のイメージを最大限に活かしたキャラクターとなっている。

冒頭、義父母を崖から突き落とすというセンセーショナルな殺しをやった後は近くの人に「助けてくださーい!」といけしゃあしゃあと助けを求めたり、会社の重役との会話で亡くなった義父の話の途中で白々しく過呼吸になったかと思ったら、一転1人になったエレベーター内ではハンカチで涙と唾液を拭いてシャツを緩めて死んだ目になったまま無感情で外に出るところなどまぁ、「悲劇の婿養子」と「冷酷な殺人者」の二つの顔をコロッと使い分けるところがやっぱめちゃくちゃ上手い。

その上で真価を発揮するのは、やっぱり後述する中学生たちを前にした態度。殺害の現場をカメラに撮られているという圧倒的不利なポジなのにも関わらず、完全に「子ども」だと舐めくさった態度及び馬鹿にした言動は完全に「サイコパス」のそれ。ルックのスマートさ(白や黒や赤のシャツで決めるヨウジヤマモトをふんだんに使ったファッションなど衣装使いも良かった!)を含めて監督作で言うならば完全に「デスノート」夜神月のアップデート版という感じの冷酷なキャラクターでとにかく良かった。

そしてそんな岡田将生と対峙する中学生の少年少女たちを演じた子役陣がとにかく良い!!

まず何より主要キャラであり、実質的な主人公である朝陽を演じた羽村仁成(「リボルバー・リリー」)。映画でいうと「俺は未見だけど「リボルバー・リリー」くらいでまだ全然キャリアも浅い俳優さんで、見た目もちょっとシュッとはしてるけど、まぁどこにでもいるようなまだ変声期も完全に終わっていないような感じで、初めはそれこそちょっと内気だけど、優しさもある中学生って感じなんだけど、東昇と初めて車中で対峙した際の圧倒的に「肝が据わっている」感じといい、なんだかんだ子どもだからと舐めてマウントを取ろうとする東昇に対しても揺るぎない意志でビタ一文譲ろうとはしない「意志の強さ」といい、まぁとにかくすごい!!

彼もまた後述する夏月(星乃あんな)に対して見せる年相応の甘酸っぱい感じと特に後半の「どんでん返し」展開での東昇の前で見せる「裏の顔」との二面性がすごいんだけど、それに関しては後述。

先月も「カラオケ行こ!」という今年暫定一位の傑作に綾野剛とダブル主演で齋藤純君っていうめちゃくちゃ上手い子役が出てきたけど、今作の羽村君といい、今年は中学生世代の俳優陣がものすごい勢いできてるなぁ!!

そして、そんな朝陽と行動を共にする夏月を演じた星乃あんなと血のつながっていない兄であり、朝陽の幼なじみである浩を演じた前出燿志も良い!!浩役の前出耀志のちょっと強がってヤンチャしてて、実際にバタフライナイフを通りがかる中学生に後ろから「切っちゃうよー!(俺の友だちが実際にカツアゲされた時に言われたセリフ笑)」とかざして金をせしめる卑近さはあれど、幼馴染の朝陽や夏月、そして後半「ある出来事」を通して仲良くなった昇を前にするとまるでダメ犬のように人懐っこそうな笑顔で擦り寄ってくる感じとか「そこのみにて光り輝く」の時の菅田将暉みたいで良かったし、なんと言っても圧倒的ミューズである星乃あんなの存在感たるや!!これに関してはここではとやかく書きません!とにかく劇場で甘酸っぱさを体感してほしい!!とにかくかわいいっ!!

他にも江口洋介(「キリエのうた」)とか黒木華(「キリエのうた」)とか北村一輝(「身代わり忠臣蔵」)とか出てるんだけど、個人的に主要キャスト以外で印象的だったのは昇の婚約相手である東静を演じた松井玲奈(「Short Trial Project 2023」)!!もちろん元SKEだってのは知ってたものの、演技してる姿はあんまり観たことなかったんだけど、こんなに達者な女優さんだったんだなー、初め松井玲奈って思わないくらい、普通に俳優として上手かった。

そんな感じで序盤は義父母を殺した男とそんな男を大金欲しさに脅迫する中学生との緊張感溢れる会話劇が展開されていくんだけど、中盤、昇の婚約者、静が薬物のオーバードーズで不審な交通事故を遂げたことでまたそのテイストがガラッと変わる!!

もちろん義父母を殺したように、静も昇が事前に静が服用する美容カプセルに薬物を仕込んで時間差で交通事故に見せかけて殺害したことがわかってくるんだけど、そこに目をつけた朝陽がなんと脅迫した際に提示した金額6000万をほっぽって、完全に独断で「(昇に)人を殺してほしい」と頼むことになる!

で、その殺して欲しい相手ってのが北村一輝演じる実のお父さんとその再婚相手。どうやら朝陽の同級生で自殺してしまった子がその2人の娘さんで、再婚相手のお母さんの方が一方的に朝陽がその子を殺したと疑いをかけたことで実家の壁に落書きをしたりと迷惑行為をしていたのがウザかったらしく、巧妙か殺害計画を立てて静を殺した昇に頼んじゃうんだけど、そりゃもちろん夏月や浩も実のお父さんなんだよ?お金は!?と反対して、特に全く関係のない昇に至っては「なんで俺がそんなことに関与しなきゃならねぇんだ!」と激昂しちゃうんだけど(「こんな悪童ばっかで日本はどうなっちゃうんだろうねぇ〜!」と電子タバコを蒸して呆れちゃうシーンが面白かった!)、もちろん殺人の報酬の代わりにカメラの映像を引き渡すということになり、渋々引き受けることに。

そこで、今まで敵対していたはずの昇が中学生と一緒になって黒一色の目立たないパーカー姿という見るからに殺人者ですっていう気合いの入った格好で「共闘」する展開はなんかシュールで面白かった。

学校の補修で出られない朝陽の代わりに2人を毒殺した夏月に代わってテキパキと死体埋めちゃうし笑笑。

で、これが終わったらお互い赤の他人だと決め、2人の殺害も無事に成功、残された時間の中で一回目のデートではなかなかキスが出来なかった朝陽と夏月(そのシーンの甘酸っぱさたるや!!こんな青春送りたかった!!)もネオン輝く建物の屋上で遂に口づけを交わすシーンは非常にロマンチックだったし、これで終わればまぁ色々あったけど万々歳…と思いきや…。

縁を切るために集まった4人がこれっきりだと軽い打ち上げをしていたところ、実は水に青酸カリを溶かして凍らせた氷を入れた飲み物を飲んだ中学生3人が死んでしまう…。また、3人を殺害した後の岡田将生のクズ演技たるや「クソガキが!」と疼くまる朝陽を蹴って踏み躙った後に、見晴らしのいい景色を前に赤ワイン片手にファンファーレをかけて高笑い…いやもう名人芸だな、おいw

ただ、そんな油断しまくった昇の背後から実は青酸カリが溶け出す前に吐き出すことで死んでいなかった朝陽が「(昇から事前に拝借していたナイフを)このナイフ返すよ!」と首元にグサッ!!瀕死の重傷を負った昇を前に真相を語り出す「裏の姿」が明らかになった朝陽のシーンがまたすごい!!

要は再婚相手の娘さんも実際に朝陽が告白してフラれたことを根に持って殺害、「リサーチが大事なんだよ」とお父さんと再婚相手に関与しなかったのも敢えてであり、全て計画のうちだったわけだ!!死にゆく昇を前に「アハっ!確かに(殺しの動機って)話したくなってくるね!」と無邪気笑って嬉々として話す感じとか、事きれた昇に対して「あー…5分持たなかったか」とちょっとがっかりしているようにも見える感じとかまさに生まれながらの「サイコ」って感じがしてこっえー!!

岡田将生演じる東昇が夜神月のアップデート版だとするならば、彼はまさにZ世代の夜神月という感じでそういう意味ではまさに新世代の月同士の騙くらかし合いだったわけだ。

で、この後も二転三転するんだけど、「純粋な中学生」と「冷酷"すぎる"殺人者」の2つの顔を持つ朝陽の見つめる先は天国か地獄かという終わり方と極太の筆で一筆入魂した「ゴールド・ボーイ」のタイトルでドーン!と終わるラスト含めてカタルシスは凄かったなぁ。

まぁ、映画をよく観ている人だったらまぁ朝陽が黒幕だってのはなんとなくわかるし、あと芸達者が多い分浩たちの父親とか再婚相手のお母さんとか無名の役者さんとの実力の差が出ちゃってて下手に見えちゃったのは残念だったけど、御年68歳の金子修介による気合の入ったクライムサスペンスとして非常に堪能できた一作でした!!
R

R