ぶみ

ゴールド・ボーイのぶみのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
3.5
きっと、あなたにも殺したい人がいる。

紫金陳(ズー・ジンチェン)が上梓した『坏小孩』 (The Gone Child)及びその映像化となるドラマ『隠秘的角落』(バッド・キッズ)を原作とし、金子修介監督、岡田将生、羽村仁成主演により映画化したクライム・サスペンス。
義父母を崖から突き落とす男の姿を偶然カメラで撮影した中学生等が、男を脅迫する姿を描く。
主人公となる男・東昇を岡田、中学生三人組となる安室朝陽を羽村、上間夏月を星乃あんな、上間浩を前出燿志、朝陽の母を黒木華が演じているほか、松井玲奈、北村一輝、江口洋介らが登場。
物語は、冒頭、沖縄の観光地である崖の上から、東が写真を撮るフリをしながら義父母を突き落とすという、二時間サスペンスドラマを絵に描いたようなシークエンスでスタート、その事件の捜査の様子と同時並行で、夏休みを過ごす中学生三人組の姿が描かれ、この一見関係ない二つの話が偶然カメラで事件を撮影していたことから、一気に急接近し、そこからは頭脳戦がスタート。
以降、基本的には東と朝陽が主導権を握り合う展開となり、どこが落とし所となるのか読めない脚本に加え、黒木、北村、江口と、脇を固める大人の俳優陣も曲者が揃っているため、一体誰が最後に笑うのかを考えながら観ることとなる。
そんな中でも、頭の回転が早い朝陽を演じた羽村や、もはや最近では一癖あるキャラクターが板についている岡田はもとより、松井がアイドルオーラを完全に消し去っていて、最初誰か気づかなかったのに加え、落合モトキが何気に登場していたのは見逃せないポイント。
加えて、オール沖縄ロケされたとのことから、本土とは一味違う風が吹く様子が映像から感じられる海辺を筆頭に、東が入り婿となっている企業が沖縄県警と関係を持っていたり、実在する新聞社を何気にディスっていたり、はたまたお墓参りの風習が見られたりと、沖縄特有の要素が随所に登場していたのも他にはない雰囲気に溢れており、良かったところ。
クルマ好きの視点からすると、東がレクサスのフラッグシップモデルとなるLSではなく、義父のお下がりだとしてGSに乗っており、何気に自分の欲しいクルマでなく、かつ格差を示していたのが印象的だった次第。
沖縄特有の美しい青空の下で繰り広げられる頭脳戦に最後まで目が離せず、私が観たイオンシネマでは何故か276席ある最も大きいスクリーンで上映されたものの、公開二日目にして、私ともう一人しか観客がいないという中、岡田将生が岡田将生している姿を大スクリーンで堪能できたとともに、エンドロールで倖田來未の歌声が浮きまくっていたのが本作品の最大のミステリだった一作。

明日だけは、ずっと僕の味方でいて。
ぶみ

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