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一月の声に歓びを刻めのANのレビュー・感想・評価

一月の声に歓びを刻め(2024年製作の映画)
4.2
いい映画だったな。
ずっしり重い画面も、どこまでも日常で、視聴後には、ぼんやり歓びが残った。

雪を踏み締める深い音、波の音、太鼓の音、牛の鳴き声、人のざわめき・・・思わず耳を傾けてしまう。そして、静寂。それから、自分を絞り出すような声にも。音と画がとにかくいい。そして、一章 カルーセルさんの怪演!

三章 それまで多くを語らなかったれい子が、花(と絵)を燃やして、それから歌いながら街を歩くシーンは、思わず「よかったなぁ」が込み上げてくる。

ショッキングな告白は観客にも痛みを感じさせる。とはいえ、そこには分かりきれない痛みもあるだろう。でもそれを否定も肯定もしない。ひっそりと分かりきれないまま救われたり、声を荒げて怒られたり、気づかず誰かに届いたり。分かりきれないって、絶望じゃない

ティーチインでの監督と観客のやり取りは、自分では気づかなかった演出や、思わず笑ってしまう撮影裏話も。非日常の事件、それにあった人たちの日常と、非日常の撮影と映り込む日常。「回想としてではなくて肉声で」監督のどこまでもナチュラルで真摯に向き合う姿勢に好感がもてる。

一月の監督の声が刻まれた。多くの人に観てほしい映画だ。
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