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青春18×2 君へと続く道のMHRのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
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よかった。あるガイドブックとしての映画。岩井俊二の映画で、役者の映画でもある。グレッグハンは相変わらず良くて、清原さんもすごくいい仕事をしている。脇の固め方もうまくて、個人的には道枝駿佑の嬉しい発見だった。ちゃんと映画館に見に行ってよかった。

「その土地が描かれていない」という批判もあるだろうが、これは旅の映画で、旅をするための映画だから、それでいいんだと思う。立体的にわきあがる東京の夜景、春、夏の台湾、冬の鴨そば、雪、会津、こういうもの。観光を楽しむのではなくて、観光地を楽しむことについての映画だから、やはりガイドブックのようなものだと思う。私たちは映画の中で旅ができる。何かしらの事情があって、実際の旅行ができなくても、映画を見ることでどこかに行くことができるし、ある個人的なことを追体験できる。と改めて思った。この映像表現、音楽、演技、すべてが映画にしか出来ないことだと思う。MVには出来ないことだ。漫画にも同様にできない。劇場で見る映画である意義をよくいかした映画だと思う。出てくる人がよくて、べたな展開だと思っても、その扱い方が良かった。もう知ってる、というのがすごく良かった。よく作ってある。変に悪人が出てきたり、恋愛のなかで人間関係が悪くなったりしないのも、見やすくてよかった。静かにうれしく、岩井俊二の影響を感じながら丁寧な演技を見る。それだけでよかったし、監督は鴨そばを美味しそうに撮る天才だと思う。

国外でのヒットには、華語の度合いの高さもあろうが、日本語の聞き取りやすさもあるだろうと思った。グレッグハンには舌を巻いたし、清原さんはそこも素晴らしかった。ゆっくりはっきり話して、とびきりいい表情をする人たち。言葉が少しわかっても、少しもわからなくても、伝えたいことがきちんとわかる表現だった。そして、私たちはガイドブックが好きだから、台湾でのヒットも頷く。テンプレートであること、ではなく王道であること、が望ましい。これは映像の話でもあるし、ストーリーの話でもある。もっと捻ること、もっと巧みに現実を扱うことはきっと出来たけれど、それをここで望む必要はなかった。こういう映画があっていいと思うし、こういう映画がまだ存在するのがうれしい。本当に、なかなか良かった。映画としての評価を高くつけたいわけではなくて、ジャンルものとしての出来栄えに満足したい映画。
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