柏エシディシ

ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニーの柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
昨年の来日公演、仕事で行けなかったのが本当に悔やまれるジョン・バティステ。
つい最近まではジャズ界隈で知る人ぞ知るぐらいの立ち位置だったのに、すっかり今やポップスターの趣きだ。
彼のグラミー受賞前後と最愛の人の闘病を支える姿を捉えたドキュメンタリー。
監督は、まさかのマシュー・ハイネマン。危険を顧みない骨太の取材撮影で鳴らす人だけに意外だが最近はこの手のお仕事も増えている様で。
正直なところ、「カルテルランド」「ラッカは静かに虐殺されている」などの作品に比較するとドキュメンタリーとしては無難な作りだと思う。
しかし、今やアメリカ音楽シーンの頂点に立った男の、飾らない為人やプライヴェートの繊細な表情を巧く捉えている。
特にキャリアの絶頂と妻のガン再発という最悪の事態に同時に向き合うという葛藤、そしてそれでも創作に対する意欲を失わない、もはやアーティストとしての業の様な凄みを感じる。
妻スレイカもまた創作者であるということが、やはり大きく、まるで自由の効かない彼女の分まで創作に打ち込む様な気概。
彼の作品から1番に感じられるポジティビティの裏側に、これだけのものが詰め込められているのだと思うと、また音楽へのこちらの向き合い方も良い意味で変わる思いだ。
コーチェラ2024にもラインナップされていた。フジロックでも観たいアーティストの一人だ。
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