マーフィー

映画 ○月○日、区長になる女。のマーフィーのレビュー・感想・評価

4.2
2024/02/03鑑賞。
ペヤンヌマキ監督、三輪記子さん(弁護士)の舞台挨拶付き。

区政を変えるために奔走する人々が、
新たな杉並区長を作る話。
本当の「聴く力」ってこういうことをいうんだろう。

岸本さんに夢を背負わせる人々、
冷静に現実を見る本人。
皆が同じ方向を目指しているのに、そこに向かうまでの方法が個々でバラバラで、リーダーは各々から自己実現や自尊感情などの欲求を背負わされる。
選挙に限らず、色んな組織でも同じようなことはあるなと思った。
特に圧倒的なカリスマがあるトップダウンの組織ではない、皆でリーダーを支えている意識があったり、リーダーが構成員の意見に耳を傾ける姿勢が強い組織ではありがちなことではないかなと思う。
誰も悪くないんだけど、リーダーがただただ苦悩する。
ハイボール片手に監督に愚痴る岸本さんのシーンは、様々な種類のリーダーの心に響くのではないだろうか。

「要求であり政策ではない(うろ覚え)」と事務局メンバーにハッキリ訴えるシーン。
こういう衝突もしっかりあったということは、
一連の選挙戦を通して活動家たちが、はじめは慣れない街頭演説をしていた岸本さんを選挙人として育てた一方で、
岸本さんも、ずっと政治をひっくり返せない活動家たちを自分の知る政策論でさらにひとつ上の段階に押し上げたのではと感じる。


そして区長就任後の始めての議会やその後の区議会選挙の展開は、まさに「選挙はゴールではなくスタート」ということが象徴されていると思った。


昨年から選挙系の映画をよく見ていた身としては
畠山さんの登場にゴンフィンガーを禁じ得なかった。




パンフレットには、区長選当時の杉並区の状況や、映画にも登場する長年市民活動を続けてきた東本さん小関さんの対談など、より映画を深く知るコンテンツがぎっしり。


私は以前から政治系の映画を見に行くと、その年齢層の高さにいつも少しガッカリしている。
こんなに若者が政治に関心ないならそりゃ社会は変わらんと思ってしまうし、
SNSのタイムラインで政治系の映画の感想が盛り上がったりしても、中の人は自分より上の世代の人たちなんだろうと少し距離を感じてしまう。
まあそんなこと言ってる私も選挙の映画が好きなだけで、政治に大きく関心を寄せている人とは言えないので、そのガッカリの一端を自分で担いでいるのですが。

この映画の中でも登場する人たちの年齢層は高め。若い人もいるけど、圧倒的に年齢層が高い。
そうなるともう分かんなくなるんですよ。この人たちがここまで熱心に取り組めるのはなんでなのかって。
理屈の部分ではわかるんですよ。家から立ち退かないといけなくなるとか、住み慣れた地が開発されてしまうのに反対しているとか。
でも何しても変わらない区政の変革に心血を注げる強さみたいなのはどこから来るんだろうって。絶対それだけじゃないよねって。

でもパンフレットの対談を読むと、この方々がどのような歴史を歩んできたか、どういう経験をして「市民運動で社会は変えられる」という強い意識を持ったのかがとても良くわかる。
この長い闘いの歴史が、粘り強い市民運動の源なのだろうと思った。











ザルドスのポスターが映り込んでたのに笑ってしまった。
私も4K版見に行った。




余談
監督のペヤンヌマキさんは、脚本家としてドラマ『来世ではちゃんとします』シリーズの脚本を務めていらっしゃいました。
パンフレットを読んで気づき、サイン会の時に見てました、面白かったですって伝えれてよかった。
マーフィー

マーフィー