嵐正人(あらしまさと)は最近子供が一人暮らしをはじめてから妻の光(ひかり)と二人で暮らしていた。大きな仕事の営業も任され大変ながらも変化の無い日常が続くはずだった。しかしいつの頃からか変な夢を見るようになり、日常での強い不快感も覚えるようになる。気づかないうちに限界にきていたイラつきがまるではじけだしたかのように、次から次に起こる出来事。仕事はダメになり、何度も死にかけ、そして記憶喪失になったまさと。記憶がなくなり素直な自分だけが残ったその時、まさとの様子は今までとはまるで別人のようだった。心地よい今の自分しか知らない記憶喪失のまさとは、別人のような自分が作り上げた過去と現在、そして妻のひかりと直面する。困惑する中で記憶を取り戻したまさとだが、自分さえ忘れ封印していた自身の過去の記憶までも全てを思い出すこととなる。強い不快感の理由、夢の正体、全てが繋がっていく。父親とのトラウマから長い間無理やり自分を封印したことで心が壊れかけていたことが分かり自身に恐怖するまさと。あの頃の”僕”が望んでいた”私”としての生き方からもう二度と逃げないと奮闘するまさと。怒りをぶつける人、傷つく人、混乱する人、そして、応援する人。様々な気持ちと出会い、失うもの、得るものに向き合う。たくさんの人が自分らしさに対してそれぞれの答えを探しながら生きているこの時代。この物語は、まさとが選んだ一つの答え。