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正義の行方のVのレビュー・感想・評価

正義の行方(2024年製作の映画)
4.1
福岡県飯塚市で起きた女児2名が登校中に誘拐・殺害された後、森に遺棄された状態で発見された事件こと通称飯塚事件を取り上げる本作では、検察や刑事、新聞記者、弁護士など当時事件に関わっていた様々な人物の視点と語りを通じて、元死刑囚の久間三千年の冤罪の真相に迫っていた。当時、革新的だったDNA鑑定の証拠や状況証拠から有力な犯人として捜査線上に上がった久間三千年。一貫して無実を主張し死刑台に送られる最後の瞬間まで「自分は何もやってない」と叫んでいたという。久間の妻や弁護士の再審の訴えにより、徐々に当時の判決の強力な裏付けとなったDNA鑑定のガバさや不自然な目撃証言、証拠の弱さが浮き彫りになっていく。しかしあの頃警察やマスコミの聞き込みにより提出された証拠は充分だったと再審を認めず掘り起こそうとしない裁判官や検察たち。飯塚事件の真実とは、日本の司法の正義とはどこにあるのか、どこに行ってしまったのか。丁寧に取材を重ね長い年月を掛けついに世に放たれた、という感じで倫理的に非常に考えさせられる内容の映画、いや映画というよりは私たちに向けられた〈問い〉だった。飯塚事件から30年も経っているため担当弁護士や遺族も高齢だが、事件の真相を明らかにしようと決して諦めない人たちの熱意がとても伝わってくる。
過去の出来事は往々にして風化してしまうけど、映画として今一度世に出されることによって二度と同じ過ちを繰り返さないきっかけになると思う。
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