鷲尾翼

アンチソーシャル・ネットワーク: 現実と妄想が交錯する世界の鷲尾翼のレビュー・感想・評価

4.0
【まとめシネマ】#1129

【まとめ】
* 全米のオタクカルチャーの勢い
* アノニマスの誕生から起こる異変
* 100年後のSNSとは

「4chan」とは
2003年に「moot」と名乗るユーザーが「2ちゃんねる」から分派した「ふたば☆ちゃんねる」のプログラミング言語を流用して立ち上げられた英語圏を対象にした世界最大規模の画像掲示板。アメリカでは、最もアクセス数の多いウェブサイトのひとつであり、2014年時点では1か月あたり約2200万人のユーザーがアクセスしており、月間ページビュー数は6億を超えている。

2003年に誕生した「4chan」は、全米のオタクたちにとって憩いの場となり、独自のネットミームや流行が次々と生まれた。日本でもアスキーアートなど掲示板特有のネットカルチャーが次々と誕生したのと同時に、アメリカのオタクたちも「4chan」に夢中だった。

ちなみに全米で流行したネットミームの代表例として、リック・アストリーの大ヒット曲『Never gonna give you up』のMVを騙しリンク先として多用する「リックロール」がそのひとつだ。

やがて「4chan」の中でハッカー集団「アノニマス」が誕生した。

独自の正義でサイバー攻撃を繰り返した結果、カルチャーの場だった掲示板が、大規模なデモ活動の温床となってしまった。本作に映るデモ活動の中には、ナチス式敬礼を冗談半分で使用してしまうほど、カオスな正義や噂や憶測が飛び交い、それがデモ活動の糧になっていく。

本作を見て思うことは、SNSは立派な猛毒だ。
作中では「アノニマス」の創設メンバーで、一度SNSから離れた人物が登場する。しかし、終盤にはある出来事をきっかけにSNSで活動を再開する。再開後の彼の姿を見ると、SNSは酒やタバコのような依存性の高い嗜好品だと気付かされる。

そして、終盤にはこれからのSNSについて語るシーンが映される。それは「SNS」というものに対するたったひとつの理解かもしれない。
鷲尾翼

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