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夜明けの国のkentaromoriのレビュー・感想・評価

夜明けの国(1967年製作の映画)
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1966年の中国、とてつもなくピュアである一方ですでに演技的なウソくささもある。 
一瞬の「幸福」を描いた奇跡的な一本。ワン・ビン前史として見た。 

「趣味で登山をしていると、山道で鹿や猿に出会うことがある。相手が小ぶりな雷鳥でも、遭遇した瞬間にはことばを失う。クマだったら、どれほど息を呑むことだろう。『夜明けの国』には、カメラが、文化大革命の得体の知れなさと出会い、思わず息を呑んだ感じ、いわば<真空地帯>が写っている。この<真空地帯>感はどこからきたのだろう。この映画は、ことがらを断罪しないし、見るものに特定のメッセージを押しつけない。それゆえ、見るものは、置き去りにされたようで、真空の雰囲気に包まれるのだし、被写体となったひとびとのすがたを映画の素材と見なしてはいないさわやかさも、真空感を助けている。 
映画が真空地帯を描くとは、その瞬間、シナリオを捨てることであり、そのシナリオの放擲と引き換えに、『夜明けの国』は、文化大革命におけるシナリオの空白さを嗅ぎ当てる。文化映画に重心を置くがゆえに、シナリオとはなにかを問うことができた稀有な作品である。」(鈴木一誌「『夜明けの国』がつくられた時代」『目撃! 文化大革命』)
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