クロスケ

まひるのほし 4Kのクロスケのレビュー・感想・評価

まひるのほし 4K(1998年製作の映画)
3.7
一心不乱に創作に打ち込む姿やカメラに向かって何事かを語りかける姿をじっと見続けていると、世間一般的に「障がい者」と呼ばれる彼らが、何だか「賢者」のように見えてきます。
事あるごとに、情けないと呟くヨシヒコさんの言葉はまるで哲学のようで、思わず耳を傾けたくなるし、シュウちゃんがキャンバスに注ぐひたむきな眼差しと木炭で真っ黒になった指先は芸術家のそれだし、シゲちゃんの好きなものに対する、どこまでも一途な姿勢には、こんなふうに素直であるべきとさえ思いました。

原一男の『ゆきゆきて神軍』にしろ、ワイズマンの作品群にしろ、優れたドキュメンタリーは被写体がとてつもなく魅力的です。それが思想的に過激な人物を扱っていようが、目を背けたくなるような陰惨な場面が映し出されていようが、もっと観ていたい、ずっと観ていたいと思わせるのです。

ヨット遊びに興じる若者たちに向かって叫ぶシゲちゃんを収めた浜辺のシーンなどは、まるで青春映画のような瑞々しさだし(撮影クルーが「思いっきりやっちゃえ」みたいな感じでけしかけるのもまた良い。)、ヨシヒコさんの個展に訪れた若い女性との何処か滑稽でありながら、緊張感迸るシーンも印象的でした。
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