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死刑執行人もまた死すのPriorityseatのレビュー・感想・評価

死刑執行人もまた死す(1943年製作の映画)
4.3
後半は劇的すぎるが、前半は無駄が一切なく非常に面白い。
シーン2のマーシャがフランツの逃走を幇助するシーンは物語の核となるが、そのサスペンスは何の変哲もない美術セットにおいて奥行きを最大限に活かしたフリッツ・ラングの職人芸と称せる。

①画面奥よりフランツが登場。それまでの広い路上とは異なり奥行きのある狭い美術セットの影響で観客はフランツを意識する。
②帽子を変える動作でミドルショットに切り替わりフランツの顔を印象づける。
③フランツに合わせてカメラを左へパンすると同時に右奥のカップルと手前の男性が(顔を写さず)画面左に歩行。これにより観客は一気に画面に引き込まれる。
④フランツに合わせカメラを右へパンし(同時に奥で黒い自動車がフランツに合わせて右へ走ることで観客の画面への緊張は途切れない)、マーシャと出会い、来た方向へ戻ろうとするがゲシュタポの追手に気づき、開いていたドアに隠れる。
⑤パッケージにも使用されるここの構図は完璧かつサスペンスに効果的である。ゲシュタポに応答するマーシャと銃を出すフランツは上手に配置される。なおこのカットの間は完璧である。
⑥ゲシュタポが去った後のマーシャと八百屋の女性の奥で移動するフランツを観て観客は安堵する。

短いシーンだが、無駄のない洗練されたシーンであると言える。また、物語においていくつかの重要なセンテンスも散りばめられているため、観客の注意を引く仕掛けがいくつも用意されている。
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