洋梨

ガメラ 大怪獣空中決戦の洋梨のレビュー・感想・評価

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)
3.8
世の中がゴジラゴジラと喧しい。日本映画専門Chでの旧作ゴジラのヘビーローテーションはまだいいとして、NHK-BSでも始めやがった。評判の高いハリウッド製正調リブート版ゴジラの公開を前にして、もう既にゴジラには食傷気味である。ま、それでも当然観に行くけどね。
そういう訳で、少し趣向を変えてみよっか、そういやガメラのリブート版も評判良かったなあと思い出し、十数年ぶりに本作を鑑賞した次第。
今見返してもやはり良く出来ている。脚本に無駄がなくテンポよく話が進行する。何しろローテクの特撮が素晴らしい。アオリ構図と遠近法を多用したミニチュアワークで、人間の目線から見える怪獣の姿に徹底的に拘っている。極めつけは近景に電線を配置してその奥で怪獣が動いていること。手前に電線があるのとないのとではリアル感が全然違う。俯瞰シーンが多い東宝ゴジラVSシリーズとはホント対照的。予算の差をアイディアで跳ね返したスタッフに拍手。
あと、ゴジラと違って怪獣が無慈悲に人を貪り食う処が好い。人が食われるってのは即物的で絶望的で救いが全くない絶対の恐怖だよなあ。
何で亀が火を噴いて回転しながら飛ぶかねぇ?という旧ガメラシリーズ時代は問うてはならなかった根源的な疑問に、リブート版は怪獣は超古代文明が開発した生物兵器という新たな設定で答える。それに留まらず、本作では登場人物に「超古代文明も迷惑なモノを残してくれたよ」「私たちもとんでもないモノを残そうとしてるわ。例えばプルトニウム」と語らせる。公開当時は今一つピンと来なかった台詞だが、福一原発事故を経た今では重みが一層増して聞こえる。
本当に怖いのは、怪獣に噛み砕かれ消化されるような即物的なものではなくて、一見何ともなくて怖さに気が付かないものが深く静かに進行することなのかも知れない。
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