全体のチープな作りと華のない役者の演技がマニア心をくすぐる50年代マッドサイエンティストホラー、ただそういった好事家や映画ファン以外の人には退屈な1時間を提供される可能性が大なのに注意。
一方でこの時代のアメリカ映画での日本は中国とごっちゃにされたり、東京では至るところから富士山が見れたり(確かに今よりは見れたと思うけれど)、スーツ姿でメガネの出っ歯が出てきたりと今の日本人から見れば腹立たしい描写ばかりなのだが、この作品に関しては特に違和感なく日本が表現されていることに驚く。プロデューサーが日本愛好家なのかと思いきや何てことはない、他のレビューでも書かれているが実はアメリカの配給会社が日本支部に製作を命じ、日本の撮影所で撮られて日本のスタッフが協力したれっきとした日本映画なのだ。道理で何の違和感も感じないわけだ。
カナダ出身で元は歌手だったが諸事情により俳優に転向した中村哲のつたないが味のある演技、そして日本語と英語両方を何のてらいもなく達者に話す姿が日米の融合をよりナチュラルにしている。ちなみに中村哲は英語の能力を買われて日米合作作品では通訳的なポジションで仕事を依頼されていたとかで、代表作『モスラ』や『緯度0大作戦』に出ていたのもそういう理由があったからのようだ。
あとこの映画でマッドサイエンティストに改造された類人猿化した人間が出てくるが、どことなく『月光仮面』のマンモスコングに似ているのが気になる。…と思って調べたら何とモンスターの造形を手掛けたのが両者とも高木新平(『七人の侍』の野盗のボス)で、『双頭の殺人鬼』と『月光仮面』の製作が近いことから流用している可能性が出てきた(頭部は全然違うが)。日本の超人気番組とアメリカのB級SFがこんなところでつながりがあると思うと感慨深くなる。
あとラスト、これほどまでに潔く罪を認めるモンスターも珍しい。