とちこ

港のマリィのとちこのレビュー・感想・評価

港のマリィ(1949年製作の映画)
4.0
マルセル・カルネ、三作目。「霧の波止場」同様にジャン・ギャバンが主演を張っています。こちらではガラリと変わって、とてもダンディーな大人の色気を醸し出す、中年おじさんとなっていました。シャトラールという名前の役で、酒場と映画館を経営している社長です。あまりにもモードが違いすぎて、「霧の波止場」と同一人物だと最初気づきませんでした。
タイトルにも現れているように、実はこの映画のもう1人の主役は「マリー」という港町のカフェで働く女性です。ニコール・クルーセルさんという女優が演じています。色気あります。ジャン・ギャバンの心を手玉に取ってしまうような魅力を持っていました。ちなみにこの作品で初めて知った女優さんですが、この役にとてもハマり役と感じました。クールかつ相手に簡単には媚びない女性です。
映像面において気になったんですが、マルセル・カルネは画面に映っている小道具などへの意識がすごいあるなと思います。それを感じられたのは、この作品のジャン・ギャバンが頻繁に通う「café du port」でのシーン。マリーが働くカフェでもあります。そこはカウンターバーのようになっているんですが、そのカンターの背後にあるコーヒカップがとても綺麗に横一列の状態で吊るされているんですよね。しかもそこだけじゃなくて、カフェの主人の奥さんが奥の部屋でジャガイモの皮剥きをしているシーンで奥さんが作業している背後にある収納板の上にある小瓶の白い入れ物がたくさんあるんです。砂糖とか調味料などを入れたりするような。その小瓶が、ロシア人形のマトリョーシカのごとく、左から右に向かって一列にズラーっと綺麗に並べられているんですよね。小津とかも画面に映るものへの意識ってすごいと思うんですけど、マルセル・カルネもすごく敏感なのかなと思います。
話は変わりますが、港のマリーとGoogleで検索すると夏木マリさんの「港のマリー」(1995)という曲が見つかりました。この映画との影響関係は分かりませんが、気になった方はぜひ聴いてみてください。夏木マリさん歌うまいです。
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