主人公のカメラがフィルムじゃないといけなかったのは、主人公が「エモ」が好きなだけでも、単に物語を進める上での都合によるものだけではない。つまり現像するまでの時間で何かストーリーテリングを行い、また写真が出来上がった瞬間を強調するためでもなく、その待つという行為、カメラに収められた「いまここ」とそれを見るときの「いまここ」との間にギャップを残すことに意味があるからなのだ。

この映画のカメラ（＝見るときのいまここ）は常に被写体（＝カメラに収められたいまここ）と距離を置くが、それはまさに主人公の視点だ。常に自分を客観視しようとし、物語から一人称を排除しようとする。それでもたまにカメラは主人公の意図に反して、あるいは無意識のうちに、自分たちを捉えている時がある。正に「町のあかり」のショットがそうだ。（あるいは、主人公が撮ったカメラ目線のポートレート。）

エロティックなのも、偶然ではない。主人公の彼氏への接し方が、特にトランプのくだりなんかが1番エロいが、それ以前からずっとエロさが漂っている。それはその主人公の距離の取り方のせいであり、常に彼氏に対しても、写真に対しても自分に対しても「エロがり」や「エモ」の距離を取っているのだ。

周りの人に感想を聞いてみた限り、この映画は脚本の行間の行間まで読む、あるいは俳優の演技まで信じないと理解できないようだ。というかもっと自分の経験と（たまたま）重なるかどうかの程度でしか共感できないのかもしれない。（その点は『5時から7時までのクレオ』に似たものを感じさせる。）自分はすんなりと理解できたが故に、初めはこの作品の魅力を深いところまでは、脚本のほぼ文字のレベルまででしか分かっていなかった。周りが理解できないという事実に気づいてから、この作品について考えれば考えるほど、自分の無意識が暴かれていった。

去年の冬自分が1番影響された映画である。この映画へのアンサーのつもりで自分も映画を撮った。

今泉力哉監督の『街の上で』を彷彿とさせるシーンがあり、ところどころ笑った。

人生の1ページをどんな形でも残して、人に共有したいと思えた。

丘の上での、「なんで遠くにあるものばっか綺麗に見えるんだろうね」のセリフや、カメラ屋の店主の「運命的な出会いで手に入れたものは、一度手放すともう2度と手に入らないことが多いです」どちらも物語の主軸をどう示していくのかという点でも、単純に良いセリフという点でも、綺麗な映像という点でも秀逸。

w.o.d.のロンTにLIFE IS TOO LONGって描いてあるのいいね。

なんで焼きそばにしたんだろう？

うたさん美しい。