『用心棒』やその元ネタの『血の収穫』みたく街に巣食う二つの犯罪組織をベルモンド演じる謎の男が叩き潰すという展開になると思いきや、主人公の正体が潜入捜査官だと判明して『暗黒街の対決(喜八版)』になり、更にそこへ組織と手を組む悪徳警官グループが絡んで話が複雑化して今一つ把握できないままベルモンドがずんずんアクションしているうちに話が終わるという『三つ数えろ』のような展開に到達する。それでもベルモンドの華やかなスター性と献身的なアクション、美女との絡みは健在なためそれなりに面白い。
色んなハードボイルド作品の良いところを集めて話を作っているためか、やけにハードボイルドやノワール作品の引用が多いのが印象的。私が気づいたのでは先に挙げた作品のほかにサウナ室での殺害(『Tメン』)、持ってきたガソリンで店を放火(『フレンチ・コネクション2』)、ラストでの真の悪党を倒す手段も『ダーティハリー2』の変則的なオマージュと言えなくもない。
敵から逃走するベルモンドが教習所の車でカーチェイスする場面での、ベルモンドを生徒と勘違いして運転チェックをする試験官とのやりとりに爆笑。
新機軸として今回ベルモンドにはお年頃の娘がいる設定があり、そのやりとりは微笑ましいものの賑やかし以上の効果が出ていない。あとやっぱり父親がイケメンなためか反抗せず終始ベタぼれ状態。
『太陽がいっぱい』のマリー・ラフォレがヒロイン役で登場するが、人妻で小説家という特殊な設定にした割に大して活かされないまま出番がないまま終わる。