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アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生のGAKUのレビュー・感想・評価

3.1
 アメリカを代表する女性写真家のドキュメンタリー・ムービー。彼女自身や彼女の被写体となってきたミュージシャン、セレブリティたちが当時を回想する形で希代のスーパー・フォトグラファー、アニー・リーボヴィッツ像を浮かび上がらせてゆく。
  要はアニーの才覚とキャリアの称揚なのだが、その手のサクセス・ストーリーにありがちな胡散臭さは全くない。実の妹が監督を務めたことも大きいのだろう、一人の人間としてのアニー・リーボヴィッツ像もリアリティを持って伝えられているのである。
 しかしながら、それ故にアニーのセクシャリティに関する描写が十分でないのは残念なところだ。スーザン・ソンタグ女史との恋愛事情や50歳を過ぎて作った子供についてなど、興味をそそられるいくつかの伏線は回収されないままだった。アニー・リーボヴィッツをある程度予習していた人は少々物足りなく感じるだろう。

 ともあれ、そんなあやふやさも含めて人なのだとすぐに気付かされる。
「人の本質を捉えるなんて無理よ。人生はもっと複雑で大きいものなの」
 エンドロール間際の、あのアニーの言葉は視聴者に向けられた切実なメッセージではなかったか。
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